「傘はこれ以上進化しない」なんて話を聞いた事があります。なんでも、あれはあれで完成されたデザインなんだとか。たしかにここ数年の傘事情を考えても、そして百年くらい前の文献を見ても、さほど形状に違いはありません。素材面ではある程度違いはありますね。撥水加工だの骨組みが金属製だの。でも、基本的な形はずっと同じです。
コタツも同様だと思います。テーブル状であり、布団が掛けてあり、布団の中には暖かくなる摩訶不思議機械が設置されている。古くは赤外線ヒーターではなく豆炭だったり、また最近では赤外線ヒーターではなくなんかもう色とかない平面のヒーターだったり。ダイニングテーブルのように足が高い種類、掘りごたつのように中が低い種類。様々ではありますが、大枠は同じです。
これ以上進化しそうにもありませんが、しかしここは二十一世紀の技術を用いてハイテクコタツを考えてみようではありませんか。昔のコタツと今のコタツ、使い方は同じですが使い勝手はいろいろと違います。時代が変われば求められる機能も異なります。今の時代に必要な機能をコタツに盛り込めば、さらに使い勝手のいい、そして離れがたいコタツになるはずです。
現代は「個の時代」だと言われています。「言われています」とか書いてみましたが、適当に言葉を創ってみたものです。でも検索したら案外引っかかるんで驚きました。で、「個の時代」。我が家の中を見ると、子供たちはDSでゲーム、奥さんはスマホでゲーム、そして私はPSPでゲームです。DSじゃなくてゲームボーイアドバンスだったり、PSPじゃなくてDSや3DSだったりしますが、似たようなもんです。皆が皆、思い思いに自分のペースでゲームを楽しんでいます。そのような家庭に必要なものは何か。皆が集まる際に必要なものは。
まず、LAN機能があります。今のご時世、携帯ゲーム機には無線LANによるネットワーク接続機能があります。DSであれば各ゲームソフト固有の通信機能が使えます。配信されているアイテムなんかをダウンロードできたり、はたまた見知らぬ人と通信対戦ができたりです。そこからさらに進んで3DSやPSPになるとブラウザでWEBサイトを見たり、はたまたゲームなんかを購入してソフトの入れ替えをせずに楽しんだりできます。また、スマートフォンであっても自宅の無線LANに接続する事で通信費用を節約しつつ、より高速な回線を使用する事が出来ます。無線LANが使えなくても、通常の有線LANのポートがあれば若干古めのノートPCの接続ができます。ほとんどを無線にするとして、有線の口は二つもあれば十分でしょう。親機と無線で接続して、コタツの天板に有線の口と無線のアンテナを付ける。そうすればLAN機能を備えたコタツができるはずです。配線は天板の内部に埋め込んでしまえば問題ありません。有線はともかく無線であっても、ある程度離れると電波が減衰して通信に支障が出てしまいます。そのため、必然的にコタツの周囲に集まる事になります。
みんなをコタツの周囲に集めたとして、他に必要なものは何があるでしょうか。コンセントです。できればACアダプタが連続して使えるような、間隔にゆとりのあるタイプ。それが四隅にあるようなコタツが、現代のコタツではないでしょうか。携帯ゲーム機は、気がつけばバッテリーが切れています。DSなんかはまだしも、PSPは気がつけばバッテリー切れです。モンハンの通信プレイなんかは電源必須です。プレイ中に無情に「充電してください」と出た事も一度や二度ではありません。ご迷惑をおかけしております。
また、従来の携帯電話と違ってスマートフォンは尋常じゃなくバッテリーを喰います。基本的には一日もたないと考えていいでしょう。丸一日全く使わなかったら四割くらい残ったりもしましたが、音楽を聴いたり、ネットで調べ物をしたり、掲示板で煽ったりするとガンガンバッテリーを消耗します。今までは数日に一回、寝る前にでも充電すればいいや、くらいだった我々の携帯は、場合によっては充電器を夫婦で争い、そして充電器を指すコンセントを子供たちのゲーム機と争奪する事になりました。
人が大勢一か所に集まると、人数と同じ数以上のコンセントが必要になります。現在我が家の居間にあるテーブルタップには、各種ゲーム機の充電アダプタ、携帯の充電アダプタ、そして単三充電池の充電器が接続されています。少なくともこれだけを賄う必要があるのです。ならばコタツの天板四隅に二つずつくらいコンセントを配置してみましょう。八つもあれば大抵のご家庭には対応できるでしょう。大家族対応機として、コタツのサイズが大きくなれば三つずつ、合計十二のコンセントを配置することだってできるかもしれません。お茶なんかをこぼす事を考えて各コンセントにはカバーが掛けられる方がいいでしょう。また、コンセントの近くにスイッチを備える事で部分的に使用を制限し、節電や故障に対応するのもいいかもしれません。こうすると、コンセントの取り合いになる事はありませんし、四方八方に伸びたケーブルに足を引っ掛ける事もありませんし、ケーブルの知恵の輪に挑む必要もありません。
しかし問題はあります。電源を備えるからにはどこかから給電しないといけません。コタツの下部分、ヒーターがある方ならば何の問題もありません。従来から電源コードがあるので、そこに便乗すればいいのですから。しかし、今回は上の部分、天板に各機能を搭載しようとしています。こちらは今までであれば電源を必要としないため、自由に取り外しができました。しかし、このままでは下部分とセットにしないといけません。上下で差し込み式の部分を作って下から上へ給電するか。それとも上は上で別に電源コードを準備して、一台のコタツでコンセントを二つ使うようにするのか。そういう問題を解決するために、二十一世紀の技術を使用しましょう。
「非接触電力伝送」という技術があります。ケーブルや端子を接続しなくても、場所が合ってればそこに置いておけば通電する、という技術です。端末側で、例えば充電用の端子にちょっとした小物をくっ付けてから対応する台に置いておけば、台の方から小物に給電され、その小物が端末を充電してくれる。簡単に言うとそういう技術です。便利は便利だろうけど普及にはまだ時間がかかるだろうなと思っていたのですが、先日電器屋に行くとiPhone用のセット一式が売ってありました。iPhone専用とする事で機種ごとのサイズ差なんかを考慮する必要がなくなり、設計できたのでしょう。また、それ以外にも普通の単三充電池用の充電器もありました。これも台の上に置いておけば充電をしてくれるようです。今までだったらコンセントに差し込む必要があったのですが、この技術だと台の上から外れなければ無造作に置いておけば充電完了です。iPhone専用充電アダプタが発売されたという事は、いずれはDS専用なんてものも発売されるかもしれません。Wiiリモコン専用無接点充電セットは既に発売されているのですから、ゲーム機用が出ないはずがありません。この技術を使って、コタツの下部分から上部分へ、コタツ布団を飛び越えて給電をすれば問題は解決します。むしろ、天板からも給電する事で各端末への無接点充電機能を持たせることだってできるかもしれません。
勿論デメリットもあります。まず、この非接触電力伝送の技術が普及していない点。電器屋で見た限りでは、最近ようやく規格が決まったばかりのようです。一般に普及していないのも当然ですが、便利な事には違いないのですから大きな問題がなければ普及すると思います。なので、普及率の点は時間が解決してくれるでしょう。他には、「コタツの天板如きがやたらめったら高性能になって大丈夫なのか」という点。コタツの天板って、かなり乱暴に扱われるもんです。上に乗られたりすることもあり、固体や液体がこぼれる事もあり。生活に密着した道具なので仕方ありませんが、ある程度の耐久性は必要不可欠です。「お茶をこぼしてコンセントが半分使えない」「テレビの反対の場所は上にいろいろ乗ってたんで電波が出にくい」くらいでもダメなのに、「ジュースをこぼして感電した」だと一大事です。乳幼児がいるようなご家庭には向かないかもしれません。他にも「電波出しまくりで大丈夫か」とか。無線と電源、少なくとも二種類の電波を発するようになっています。ノイズが混ざらないか、片方の電波がもう片方に悪影響を及ぼさないかという心配があります。いろいろ出てるんで「肩こり、腰痛に効果あり」なんて事もあるかもしれません。そもそも暖房器具ですから、将来的にはコタツに入ってゲームしてれば腰痛治療もできるようになるかもしれません。しかし、初期段階ではペースメーカーに影響が出ないかとか、妊婦や乳幼児の近くで使ったらよくないとか、そういう心配もあります。
無接点や無線LANはさておき、コンセント付きコタツテーブルくらいなら配線を頑張れば自作できそうです。天板の一部をくり抜き、コンセントを埋め込んで配線を仕込む。火災や漏電を防止するのにいろいろ考える必要がありますが、基本的には半田ごてとノコギリがあればできそうです。現在我が家にはコタツがないので、これを機にコタツ導入をしよう。と、奥さんに提案したのですが「いやだ」とのつれないお言葉。この二十一世紀型コタツの案を提供するんで、誰かうちの奥さんにコタツを買わせるいい方法を提供してください。