我が家では洗濯に石鹸を使用しています。子供たちの肌が弱いからというのが理由です。大抵のドラッグストアには洗濯用洗剤のコーナーに一種類か、多くて二種類程度は洗濯用の粉末石鹸が売ってあります。スーパーでも売ってたり、逆に合成洗剤オンリーのドラッグストアなんかもありますので、近所の品ぞろえはきちんとチェックしておかないといけません。取り扱いが開始されたり、いつの間にか販売が終わってたりしますので、定期的に巡回する必要もあります。

今年の春ごろから、粉末から液体の洗剤に変えました。今までと比べて溶け残りが多発したのが理由です。そりゃ多少多めに洗剤を投入していたような気がしないでもないような気もしますが、それにしては溶け残りすぎでした。しかも被害が多発していたのは奥さんの黒いタイツ。あの繊維が石鹸洗剤の粉末を引き込むんでしょうかね。業を煮やした奥さんが「今日から液体」と、石鹸成分由来の液体洗濯洗剤を購入してきました。

そのせいでしょうか。今年の夏はみんなの服がやたらと黒ずんでいました。一番ひどいのは私のTシャツでした。下着代わりに使用しているので白いものが多く、さらに常に肌に接していたからでしょうか。数回着用すると白い生地がだんだん黒ずんできます。汗由来の汚れです。全体的に黒ずむんでなかなか気がつかないんですが、たまに洗剤がピンポイントでしみ込むせいか、局所的にきれいになったりしました。そのせいで、汚い水玉模様が出来上がる始末。まさかシャツ全体を洗剤に漬け込むわけにもいかず、漂白剤もさほど効果がなくてなにか良い手はないものかと悩んでいました。

で、困った時はグーグルです。いろいろ調べてみると「固形の洗濯用石鹸を使うといい」との事。二十一世紀にもなって石鹸で手洗いしろと。洗濯板で力いっぱいゴシゴシやれと。そんな力技じゃなくてもうちょっとこう、お婆ちゃんの知恵的なモノはないのか。「洗濯するときに一緒に○○を入れると黒ずみが取れる」とか、そんな感じの。調べてみたけどなかったもんで、仕方なくゴシゴシとやる事になりました。

しかし実際にやってみるとこれがびっくりするほど汚れが落ちる。百円ほどで売っていた固形石鹸ですが、シャツにこすりつけて泡立たせる段階で既に泡が灰色になっています。洗濯板に付着する泡も、流れ落ちる水も、どれもこれも灰色。一度すすいで再度石鹸をつけて、と繰り返してもまだ灰色。シャツ三枚ほど洗濯板を使って、仕上げに洗濯機で脱水を行うと、そこには白さを取り戻したTシャツが、驚きの白さです。そう言えばこんな色だったんだ、と思うほどの。

夏場は毎日風呂に入る際に、その日着ていたシャツをゴシゴシと洗うようになりました。しかし、シャツはきれいになるもののこれはこれで問題がありました。まず、洗濯板で力任せにゴシゴシ洗う都合上、「生地が傷みやすい」という点。安物のシャツなんかだと特に目立ちます。そして、単純に「とても疲れる」という点。かつては主婦の重労働であったと言われる洗濯。シャツ一枚でこんだけ疲れるんだから、家族の分を洗っていた時代はどんだけ大変だったのでしょうか。洗わないと汚いけど、しかし洗うと疲れる。秋になり、冬が近づき、相変わらず汚く汚れるシャツを見ながら、何か良い方法はないものかと思案していました。そんな私の視界にある物が。

ギフト用の洗剤一式です。合成洗剤と柔軟剤、それに食器用洗剤を詰め合わせたセット。そう、合成洗剤があったのです。しかも数年前から、私の目に届くところに。それまでも私の衣服にだけ漂白剤を使ったりはしていました。自分にだけ使う分には他の家族に迷惑をかけません。何事も実験だと、私のシャツを数枚とついでに部屋着もまとめて合成洗剤で洗ってみる事にしました。

洗濯機に突っ込み、洗剤を適量入れて開始。水が貯まり終わり、順調に洗濯が始まりました。洗濯機の様子を覗いてみると。これがまた驚くほどの水の黒さ。私が石鹸を使い手作業で絞り出していたあの汚れが、お手軽に、そして大量にあふれ出ています。水は透明です。そして洗剤は白い。ならば普通に混ぜれば白っぽい濁りになるはずが、そこにあるのは真っ黒な水。ハイテク酵素だかジンクピリチオンだかマイクロ粒子だかトラネキサム酸だか知りませんが、それらのどれかが効いたのでしょう。あまりの黒さに奥さんを呼んで見せびらかしてしまったほどです。大きな耳糞がとれた時のような感覚ですね。そんな事をやって合成洗剤の本気を夫婦で確認しながら、洗剤投入洗濯すすぎを繰り返すこと三回。干されたシャツには、まさに驚きの白さが戻っていました。二周目から枕カバーやワイシャツやらも追加投入したんで、試験運用にも関わらずちょっとした量の洗濯物が仕上がりました。

そんなわけで、我が家の洗濯事情が大きく変わろうとしています。子供たちの肌の心配もあるため、とりあえず一週間ほど合成洗剤を使用して異常が起きないかを調べます。これで何事もなければ我が家の洗濯洗剤は石鹸から洗剤に切り替える事に。もうシャツの黒ずみに悩む事がなくなるのです。仮に湿疹や肌荒れなどの異常が見られた場合は切り替えは見送り、しかし週末なんかに汚れ物を洗剤でまとめて洗うような運用になるでしょう。この場合でもやはり黒ずみに悩む事はありません。切り替えテストはまだ始まったばかり。どのような結果になるのでしょうか。「肌が一番弱いのは私で、つまり合成洗剤に最も適さないのが私で、その結果石鹸で手洗い継続」というオチにならないように祈っています。


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