私が初めてテレビゲームに触れたのは、となるとかれこれ二十年程遡る事になります。その頃にはすでにファミコンこと初代ファミリーコンピュータが発売されており、私は近所の友人宅で遊んでいました。あくまで他人の家の物であるので自分の好きにできるものではありませんでしたが。

操作方法なんてものもよく分かっていませんでしたが、そこは子供の貪欲さ。他人がやってる所を見たり、自分でやってみたりと、徐々にではありますがコントローラーの操作にも慣れていきました。近所ではその家にしかファミコンは存在せず、みんなで遊ぶ際には必然的に「ミスしたら交代」というルールができてきます。そうなると、いかに上達するかという事がゲームを楽しめる時間に直結します。当時は単純なアクションゲームしか存在せず、そういうジャンルのゲームが苦手な私には不利な環境だったのですが、それでも仲良く楽しんでおりました。

時は流れて現在。二十年前から考えると最近の子供のゲーム環境は非常に恵まれています。そもそも昔は「ゲームに理解のある大人」というものが少数派だったと思います。そりゃ、小さな子供は外で元気に遊んでいたほうが健康的ではあります。ありますが、子供としては寒かったり暑かったり雨が降ってたり晴れてたりすると室内で遊びたくなるわけでして。まるで四十六時中ゲームばっかやっていたそうな言い分ですが否定はしません。はい。

そう言えば、「テレビゲームは電気代がたくさんかかるから駄目」という事も言われてました。実際のところは二十四時間電源入れっぱなしでも実際の電力消費量はそれほど大きいものでもなく、今から考えるとテレビゲームの時間を減らすための方便だったのかとも思います。んで、今の私がそんな事を言おうものなら「じゃ、二十四時間電源入れっぱなしのPCの方をなんとかしろ」と言い返されかねません。ごめんね、父さんUDやってるから、ごめんね。

そんな恵まれた環境でゲームをやる我が息子。その様子はどんなもんでしょうか。昼間の様子を相方に聞いてみました。

「なんかね、『これ、むずかしい』って言ってる」

さらに突っ込んで聞いてみました。

「普通にてくてく歩いていたいみたい。敵が出ると困ってるもん」

……えーと。ポケモンというゲームのジャンルはRPGというやつでして、そのRPGというのは所謂「敵を倒して強くなっていく」という類のゲームでして。そんなゲームで敵が出てくることに困られても、それはそれでこちらが困るわけです。しかし、二十年前を思い出してみると、私が初めてRPGという奴に触れたときもそんな反応でした。てくてく歩いていたいのに敵が出てきて攻撃されたり、てくてく歩いているだけなのに何故かどんどん体力が減っていってたり。幼稚園児には難しいもんなのかと思いますが、世の中の、そして息子の周囲の幼稚園児が実際にポケモンその他のゲームを楽しんでいるところを見ると、結局は慣れの問題なのかもしれません。

実際、それからしばらく経過したある日のこと。長男がゲーム一式を持って来て、私の膝の上で遊びだしました。
……肩越しにその様子を見ていましたが、どうやら「いろんな技を使ってみる」「いろんなポケモンを使ってみる」「出てきたポケモンを捕まえてみる」など、遊び方の幅が広がってきています。お友達に教えてもらったのか、それともママに教えてもらったのか。おそらく後者でしょうが、手探りながらもちゃんと遊び方を理解しているようです。よかったよかった。無駄にならなくて済んだようです。

……で、だ。お前は今何をやってるんだ。
「あ、ちょうどよかった。ピカチュウってどこに出てくるの?」
え。ああ、森のところでたまに出てくるけど。
「森って、あの迷路みたいなとこ?」
そうそう。そんなに頻繁には出ないけど……って、そうじゃなくて。貴女は、今、何をしてるのですか。
「何って、ポケモン」
それは子供のものでしょ。
「まあまあまあ、いいじゃない」
まったく。
「貴方こそ何をしてるの」
何って、ポケモン。

結局それからしばしの間、食卓を挟んで二人でポケモンやってたわけです。お互いもう二十代も折り返し地点を曲がったと言うのに。私は「クリスマスプレゼントの準備のため」、相方は「子供の遊びを理解するため」という大義名分があったりしますが、まあ、なんだ、その、うん、ね。


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