ヘアスタイルというものは、各人の主義主張が色濃く反映されるものであると思います。……なんかよくわからん書き出しになってしまいました。髪型だけでなく、昨今では髪の色もその人の個性が現れる場所となっております。いや、適当に理屈をこねてるだけで、当人達はそんな難しい事は考えてないのではないかとも思いますが。

私は自分の髪型にはまったくこだわりません。いや、ちょっと違います。「こだわらないこと」にこだわっています。こだわってるんだか、そうでないんだかよくわかりませんが、とにかくそうなんです。おかげで、毎朝の髪のセットには5分とかかりません。髪を濡らして、櫛で寝癖を直して、はいできあがり。散髪直後なんかはほとんど寝癖ができないため、実質10秒程度で完成です。ただ、そんなふうに油断してると、頭の後ろ側に豪快な寝癖が出来ていることに気付かず、出社してから針のむしろに座る事になるんで注意しないといけません。今まで何回座った事やら。

この髪の毛、本人に弄る気が全く無いため、周囲の人間はうずうずとしているようです。親しい人間からは何回か「頼むから髪型をセットさせてくれ」という申し出を受けた事があります。基本的にそういう時は達成不可能、もしくは達成する事が難しい条件を提示しています。以前、とある友人より申し出を受けた際には「どっかの大学に合格したら」という条件を提示しました。結局彼はどこの大学にも合格しなかった……というか、よく考えたらセンター試験すら受けていなかったのですが、就職祝いという事で私の髪型を弄る権利を得る事が出来ました。

決行当日。「髪型はどんな風にしてもいい。ただし、染めるのは不可。また、衣装に関してはその友人の服を着せる」という条件のもとでcloudイメチェン計画が始動しました。何故か別の友人まで参加しています。そんなに俺を笑いものにしたいか。さて、当の友人は早速、ジェルの類で私の髪を立てようとしています。生まれてこの方、シャンプーやリンス以外の薬品をつけたことのないこの髪、とうとう正体不明の薬物に侵されようとしています。あ、床屋でこれまた正体不明の整髪料をつけられた事はあったか。あれは、髪型に変化はないからナシ、ということで、どうかひとつ。で、ジェルで髪を立てようと努力する友人。しかし。当人曰く「持ち主に似て、言う事を聞かない髪の毛だ」との事。どうも、20年近く重力に従って下に垂れていたため、立てようとしてもなかなか上を向いてくれないそうです。予想以上にジェルを消費し、「これ以上はもったいない」というところで髪の毛は断念。中途半端な結果に終わってしまいました。お次は衣装合わせ。彼とは体格が似ているため、大部分の服はそのまま着ることが出来ます。というわけで彼が選んだ服を着ることにします。なんか黒っぽい、革製のお洋服でした。そして完成。さあ、出来栄えは。
……おかしい。おそらく、この髪型と服をそっくりそのまま友人に移植したら、普通のお兄ちゃんが出来上がるものと思います。しかし。今我々の前に存在する珍妙な生物は……なんか「勘違いしたお兄ちゃん」という感じが漂っています。彼もこの姿を見て、私をナウく見せる事は諦めたようでした。諦めはしたようですが、この後「今後死ぬまでこのようなcloudを見る事はないだろう」ということで写真を撮られ、別の友人宅に赴く事になりました。その友人、そして弟にびっくりされた事は言うまでもありません。

社会人となった現在でも、髪型をいじる事はありません。自発的にいじることはないのですが、予期せぬ出来事で妙な髪型になる事があります。先日、海に泳ぎに行きました。童心に戻って泳いだり、潜ったりして遊んだ、その帰りでの出来事です。運転中、ふとルームミラーを見ると、髪が逆立っているではありませんか。そういえば潜ってからそのまんま、ほったらかしだったなぁ。日差しが強かったため、髪は完全に乾いています。今から元に戻すのはちょっと難しそうです。放っておけばいいのですが、そうもいきません。いや、普通だったらそのまま放っておきます。しかし、現在の髪型、この逆立った髪型、これに問題があります。一体何が問題なのか。現在、中央部のみが逆立っている状態です。つまり、「一言で表現すると『なんちゃってベッカムヘアー』と言われる髪形になっている」という状況に問題があるのです。しかも、この純和風な顔……「私のベッカム様に何をするのよ。きぃぃぃぃ!」という世の中の女性の叫び声が聞こえてくるようです。

弁解させてください。そんなつもりはなかったんです。むしろ、私も被害者なんです。対向車や歩行者に「あ、あの車はなんちゃってベッカムが運転してる」なんていわれてたのかと思うと……穴があったら入りたいよ……。


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