昨年の秋頃、奥さんが仕事を変えました。派遣切りとか人員整理とかそういうマイナス方面の理由ではなく、自己都合によるものです。「PTAの都合上、平日に休みを取りやすい仕事がいい」とか「子供の送迎の都合上、もうちょっと朝遅くて夕方早いような職場がいい」とかいう理由です。そんなわけで、事務員さんから服屋さんにジョブチェンジされました。「お客様、お似合いですね」とか「今年はこの色が流行ですよ」とか「ご一緒にポテトはいかがですか」とか言ってるそうです。ポテトは売ってないけど。

仕事を変えることに関して相談は受けました。が、それは「仕事を変えようかと思っている」という判断を留保した状態のものではなく、「仕事を変える」という既に決断を下した後の、事後報告のようなものでした。後で聞くところには、既にその時点で当時在籍していた会社には辞める旨を伝えていたらしいですし。そんな事とは知らず、「どんな仕事がいいかな」と聞かれたんで「スーパーのレジ打ち」という夢も希望もない回答を返してしまいました。いやだって、「あぱれるぎょうかい」ってもうちょっと若いお姉さんの仕事というイメージがあるんですよ。結婚前には「そういう仕事をしたい」と言っていたことも知っていますが、三十路子持ちPTA役員主婦という属性からは売り子よりはレジ担当の方が似合っています。実際にはあっさりと売り子採用が決定してしまったわけですが。

奥さんが仕事を変えた事で、我が家にどういう変化が訪れたか。まずは収入面です。それまでの仕事は、平均すれば月金九時五時な勤務形態でした。現在は時間はばらばら。平日は五時くらいには終わるようになっているそうですが、週末は遅くまで仕事することもあるようです。また、平日休む代わりに週末はほぼ仕事。そんな変則的なスケジュールですが、実入りはさっくり落ちています。だいたい二割引き位です。その他、「制服はないけど、店に出るときはその店で売っている服を身につけないといけない」という規則があるらしく、この方面での出費があります。勿論、社員割引なんかはあるので店頭価格よりはお安くなっているのですが、それでも積もり積もると馬鹿になりません。私のように年がら年中青いシャツと黒いズボンで過ごせるもんではありませんので、季節ごとに買い増ししなければいけません。当然一着あればいいというものではなく、着替えも必要です。なんぼ割引価格とは言え、ほぼ毎月関連支出があります。つまり、収入が減って支出が増えた形となっています。うへあ。

そしてもう一つが週末の過ごし方。奥さんが週末もお仕事となったため、子供たちの世話や炊事という作業が増えました。当初は「土曜日の日中は私がいろいろ、日曜日は奥さんがいろいろ」という分担だったはずですが、いつの間にやら「土曜も日曜も私がいろいろ。仕方ないんで日曜午後は私はオフ」となっていました。それが今では「土曜も日曜も私が全部いろいろ」です。私の休日が無くなりました。もうちょっと子供たちが大きくなれば、朝から夕方まで外に遊びに行ってくれるんでしょうけど。上はともかく下はなあ。まだ一年生だもんなあ。という事で、奥さんの転職による影響をまとめると「収入減、支出増、俺の休み消滅」となります。おかしいな。何も良い事がないぞ。

愚痴っても仕方ありません。掃除は奥さんに押し付けるとして、炊事くらいはやりましょう。毎週末の炊事担当となったわけですが、料理そのものは嫌いではありません。ただ、私の料理の場合「食べたい物があって、その材料を買いに行く」という点に問題があります。「冷蔵庫にあるものでなんとかする」というスキルはありません。ただ、反論させてもらうと「週末になると冷蔵庫には肉と玉ねぎとキャベツしか残ってない」という現状にも問題があります。魚介類はまずないし、野菜も滅多に残ってないし。毎週肉野菜炒めじゃいかんだろ。

子供にしてみれば「毎週肉野菜炒め」の方がいいのかもしれません。それなりに年を重ねて職の傾向が変わったせいか、それとも奥さんが洋風料理中心に調理するせいか、自分で料理をすると和食の比率が多くなっています。煮魚だったり旬の野菜の煮ものだったり。で、そういう料理は子供たちには不評なのです。小学生くらいだと肉食ってりゃご機嫌なんですが、あえて野菜や魚だけだったり。先日は「おから、タケノコの土佐煮、あさりの味噌汁」という献立にしたところ、子供たちから泣いて嫌がられました。たしかに逃げ場のない献立です。しかしあさりくらいは問題ないと思ったんだけどなあ。食べ慣れない食材だったからかもしれません。

私としても虐待のつもりでそんな献立にしているわけではありません。昨今では「食育」という言葉があります。食を通じて様々な事を学ぼうというアレです。で、その中には「肉だけではなく野菜や魚も食べよう」的な事も言われます。伝統的な料理だとか、旬の野菜だとか、そういうものも摂取しよう、と。で、それらから私が出した答えが先日の献立です。お子様大泣きの。念のために追記しますが、「味付けに難あり」という訳ではありません。ただ、見た事のない、得体の知れない食物だったから、そしてそれらが基本的に子供に支持されないから、です。

食育のみならず、教育なんてものは一朝一夕になんとかなるようなものではありません。おからやあさりに関しても、もうちょっと組み合わせを考えて、何回も食卓に乗せれば慣れてくれるかもしれません。タケノコはもうそろそろ慣れてくれてもいいと思います。小学校や保育園からも食育に関するプリントは配布されるので、それらを参考にしつつ時間をかけてのんびりやっていくしかありません。それらのプリントには献立の一例なんてものも掲載されてますし。

ただ、そのプリント。たしかに参考にはなるんですが完全に鵜呑みにはできない部分もあります。たとえば「伝統的な食事」という項目。きんぴらごぼうだの、焼き魚だの、なるほどたしかにごもっともとうなずける部分もあります。しかし、日本の伝統的な食事に「まつたけごはん」というのは、はたして適切なのでしょうか。これが「炊き込みご飯」ならば納得できます。でも、「松茸」。全部ひっくるめて「炊き込みご飯」ではなく、ピンポイントで「松茸ご飯」。伝統的か、あれ。


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