昭和54年度生まれの私たちの世代もとうとう三十路に突入しました。私の周囲でも結婚が相次ぎ、そして子供誕生の知らせが続いています。出産なんてのは春には次男の小学校入学が控えている私には、もはや「あの頃は大変だったなあ」と懐かしい目をしながら語ってしまうような出来事ですが、当事者にとってはこれはこれでいろいろ大変です。産まれるまでは男親のやる事ってそう多くはないし、産まれてからは環境の激変についていくのがやっとだし。全然大変そうには見えませんが、実際には奥さんに気を使ったりしているのです。女親ってのは凄いと思います。すぐに「母」になるんだもんなあ。

仲間内で言うと、先頭を走るのは我が家。長男は現在小学三年生と、もうあまり手がかからない年齢になっています。次男ももうすぐ小学生で、徐々に手がかからなくなっていくでしょう。勿論、これからはまた別の方向で大変なんでしょうが、それはそれで置いておきましょう。

次の集団は、こちらはまだ子供が生まれて数年といった面々。上の子が幼稚園や保育園に通う年代でしょうか。まだまだ手がかかる年頃ですが、我々の年齢を考えるとこれくらいでも「早めに結婚した」部類です。

その次が、まだ子供が生まれたて、もしくはもうすぐ出産という面々。新しく家族が増えて大変でしょう。生活のリズムがごちゃごちゃになったり、予想もしない出費が突然出てきたり。紙オムツって毎日使うと結構馬鹿にならないよね。チャイルドシート高いよね。

あとはまあ、スタートラインに立ってなかったり、立つ気があるのかよく分からなかったり。齢三十にもなるとデリケートな話題に分類されてしまいますので、なかなか触れ辛くなってしまっています。「あの、ほら、なんかこう、おめでたいと言うか桃色と言うか、そういう艶っぽい話とか、いや、ないならないで良いんだけどね、うん」という奥歯に物が挟まりまくって口閉じねえぞな物言いになってしまう事もよくあります。その返事も、「相変わらず何もない」ならば現状維持の低空飛行という事で冗談交じりに上から目線の「まあ頑張れ」などと言えますが、これが「別れた」系統の返事だったりすると腫れ物に触る扱いになってしまいます。

子供を二人儲けて「責務は果たした」と言い張る私です。ここで、新しく父親になる人に向けてアドバイスを送りましょう。当分予定がない人でも、例えば友人や親戚の子供なんかと接触する際の心構えとなるかもしれません。私が是非とも力説したいのは、「赤ん坊は結構乱暴に扱ってもいい」という点。具体的に言えば「尻はゴシゴシ拭いていい」という点です。「乱暴に扱ってもいい」と言っても、決して虐待を薦めるわけではありません。蹴ったり殴ったりするのは論外です。ですが、過剰に警戒する必要もないのです。それが「尻はゴシゴシ拭け」という言葉に集約されます。

赤ん坊なんてのは、泣くか寝るかのどちらかくらいしかしません。寝てるときはおとなしいもんですが、泣き出すとその原因を探し出し解決しなければなりません。空腹であれば食欲を満たし、虫の居所が悪いのであれば抱っこなりして気持ちを落ち着かせる。そして、排泄の知らせであれば後始末をしなければいけません。

「出物腫れ物所構わず」という言葉がありますが、赤ん坊は遠慮というものを知りません。オムツを換えたと思ったらちょっと残っていたのがすぐに出てきたり、オムツを換えている最中に追加で出したり、たまに黙っているかと思えばいつの間にやらオムツの許容量を超えてて服どころか布団や床まで大惨事になってたり。そりゃ、それが赤ん坊の仕事だけどさあ、もうちょっとこう、なんとかならんもんかね。と愚痴っても仕方ありません。出すのが子供の仕事なら、その片付けは親の仕事です。臭いし汚いし面倒くさいのですが、「お前がやらなきゃ他に誰もやらない」のですからやらなければなりません。

で、オムツ交換。交換時にちゃんと臀部を清潔にしなきゃいけないんですが、ここで「赤ん坊は大事に扱わないといけない」という意識があると、どうしても作業が遅くなってしまいます。丁寧に、丁重に、ゆっくりと時間をかけていると、その間に赤ん坊が暴れだしててんこ盛り状態の使用済みオムツにカカト落しを喰らわせたり、オムツを蹴って引っ繰り返したり、そりゃもう阿鼻叫喚の事態になることも少なくありません。ここで私が奥さんから言われたのが、「もうちょっと手早くやっていい」という事です。そこまで丁寧にやらなくてもいい、と。もうちょっと乱暴でもいい、と。とにかくとっとと片付けろ、と。目から鱗が落ちる思いでした。そうか、多少ならばいいんだ、と。尻にこびり付いた排泄物のカスを拭い取るのにも、ちょっとずつやるのではなく豪快にゴシゴシ拭いていいんだ、と。

生まれたての赤ん坊に対しては、男性の方がおっかなびっくり接するのに対して、女性の方はてきぱきと接するように思えます。やっぱ、何ヶ月も腹の中で飼っていた分扱い方がわかるんでしょうか。それとも、「お前この前まで私の腹の中からガンガン蹴り飛ばしてきてたんだから、これくらいの扱いされても文句言うな」とか考えてるんでしょうか。体の中から蹴られる事で、場合によってはあばらにヒビ位入る事もあるそうですが、それと比較すれば尻がヒリヒリする位いいじゃないか、と。やっぱ母ちゃんおっかないや。


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