夏の風物詩の一つに「全国高校野球選手権」、いわゆる「甲子園」があります。全国47都道府県からそれぞれ一校ずつ、東京と北海道のみ二校の代表を選び、頂点を争う野球の大会です。

「各県の代表」という事になるので、一般的には自分の所在する地域や出身地域の代表を応援する事が多いのではないでしょうか。私も当然、九州方面を中心として応援しています。最初にまともに甲子園の試合中継を見たのは1996年の決勝でしょうか。熊本県代表の熊本工業高校と愛媛県代表の松山商業高校の対決です。9回裏2アウト1点負けバッターは一年生でもうどうにもならんだろう負けだ負けだ畜生という状況で嘘みたいな同点ホームランが飛び出した試合です。あの時はご近所からも歓声が聞こえてきたのを覚えています。まあ結局試合には負けてしまったわけですが、それでもあの同点ホームランを見る事ができただけでも満足です。

この年のように「熊本県代表校が決勝進出」となると、純粋に最後まで楽しむ事ができます。やっぱ応援するなら出身地の学校のほうがいいですからね。理想を言うなら「母校が」とか、「熊本県荒尾市の高校が」とかなるといいのですが、それはそれで無理そうなので、せめて熊本県という括りで。しかし、当然ながら決勝進出するよりは途中敗退のほうが多くなります。これは仕方ない。じゃあ、熊本県代表が負けてしまったらどうするのか。私は「じゃあ仕方ないから福岡県代表を応援する」です。出身地である熊本県荒尾市という土地は隣町である福岡県大牟田市と密接な関係にあり、熊本県だか福岡県だかよくわからない扱いになっています。また、個人的には母校は福岡県だし、本籍も現住所も福岡県だしという事で次善の策としては最適です。

福岡県代表も負けたらどうするか。妥協して佐賀県代表、長崎県代表あたりに落ち着きます。それらも負けたら残りの九州勢、つまり大分、宮崎、鹿児島あたりに流れ着きます。ただ、この辺になるとテンションだだ下がりです。「ああはいはいきゅーしゅーだいひょーがんばれー」くらいの元気です。勿論、九州全滅と共に夏は終わります。西日本方面とかまでは拡大しません。

しかしながら、「熊本負けたけど福岡勝ったからおっけー」とは必ずしも言えません。昨年末から年明けにかけて開催された第89回全国高校ラグビー。これで優勝したのは福岡県代表の東福岡高校でした。「次善の策で福岡」理論なら「福岡代表が勝ってよかったねー」となるはずです。ですが、それ以上に「熊本県代表の荒尾高校初戦敗退」の方が大きかったのです。やっぱほら、地元の高校の方が心情的に応援しやすいわけですよ。年末帰省したときは荒尾高校前に応援の幕が出てたり、市内の中学校にも「当校出身で荒尾高校ラグビー部の誰某君頑張れ」な応援幕が出てたり。一応、奥さんの母校でもあるので全く無関係でもないですし。身近な方がいいじゃないですか。

国内競技ならば九州くらいまで範囲を広げますが、国際競技だと基本的には日本一択となります。勿論、その中に九州方面、もっと言えば熊本や福岡に縁のある選手がいればその人を応援する事になります。例えば2010年のバンクーバーオリンピック。そもそも冬季五輪なんて私からすれば「雪がいっぱいで羨ましい」とか「寒そう」くらいの感想しか出てきません。あと、「雪合戦したい」とか「あの雪にダイビングしたい」とか「その雪くれ」とか。夏と比べれば「日陰者」という扱いになってしまうのも仕方ありません。採用競技各種とも縁が無いので、今大会も特に何事もなく、気が付いたら終わっていたイベントになるはずでした。

年末年始に帰省した際、今年就職した下妹と話をする機会がありました。彼女の就職先は長野県。私の中の長野県のイメージというと「雪」と「山」くらいのもんです。あと果物。で、やっぱ信州お寒いんでしょな話の中でこんな話が出てきました。「今度、オリンピックに勤務先が同じ人が出る」と。

紆余曲折の末、看護婦だかなんだかになった下妹。そこの病院に所属だか勤務だかする人がスケート選手なんだそうです。秋くらいまでは職員への回覧で「うちの選手は凄いんで応援してください」なんて回ってきても「身内だから大袈裟に言ってるんだろう」と思っていたそうですが、実際に大会で優勝したとか、岡崎朋美に勝ったとか、ついにはオリンピック代表に選ばれるに至ってようやく「ああ、本当に凄いんだ」と考えを改めたそうです。「オリンピック代表に選ばれる」だけだと「多分凄いんだろう」くらいで終わるかもしれません。しかし、「岡崎朋美 = スケートの速い人」であり、「岡崎朋美にスケートの大会で勝つ = その人はスケートが凄く早い」です。スケート競技に興味がなくとも、岡崎朋美の名前くらいは知っています。なんで知っているのか分からなかったんで先程Wikipediaで調べましたが長野オリンピックでの銅メダリストだそうです。そういうわかりやすい評価軸を持ってきてもらえると、こちらとしても純粋に驚く事ができます。「オリンピックでメダルを取った人より速いオリンピック代表の人と同僚」なんだと。

勿論、妹とその選手に直接の面識はありません。ですが、勤務先が同じである事は事実です。間違った事を言っているわけではありません。私が「ジャニーズ事務所所属の芸能人の親戚」と言い張れるくらいには、妹は「オリンピック選手の同僚」なのです。そんな訳で今大会、私は、そして当サイトはスピードスケート女子500メートル、同1000メートル、同1500メートル、同団体追い抜き代表の小平奈緒選手を応援することとなりました。是非とも頑張っていただき、私を「オリンピックメダリストの同僚の兄」の座に就かせていただきたいと思います。


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