私が子供の頃、誕生日ケーキは母の手作りでした。スポンジを焼き、クリームを泡立て、そして飾り付け。私も妹達も率先して手伝いをするのですが、その理由は飾り付け後の掃除。もっと具体的に言えば、ボウルに残った生クリームのつまみ食いです。中くらいのボウルにそれなりの量が残るのですが、それでも子供三人であっという間にピッカピカ。水洗いの必要もないくらいきれいに舐めつくしてしまいます。いや勿論ちゃんと洗いますけど。
「小さい子供は甘い物が好き」。これは世間一般の常識だと思われます。子供用のお菓子というと甘い物が相場です。誕生日ケーキなんか家族の人数分切り分けたら、大きい物を狙って骨肉の争いが繰り広げられるはずなのです。しかしながら、うちの長男は甘い物が苦手です。ケーキなんかも、生クリームてんこ盛りの甘甘ケーキよりはチーズケーキなんかのあっさりとしたものを好みます。しかし、それも「どちらかと言えば」というレベル。むしろケーキそのものにさほど興味が無いようです。
それが如実に現れるのが年末年始。長男の誕生日は一月五日ですので、クリスマスケーキのすぐ後に誕生日ケーキがやってきます。正月は私の実家で迎えるのですが、私の下妹の誕生日も一月上旬ですので、カレンダー次第ではさらに実家でも誕生日ケーキを食べる事があります。わずか二週間ほどでケーキ三連発。普通の子供であれば大喜びのはずです。ですが長男はあまり嬉しくなさそう。今年のクリスマスケーキは通販で注文したのですが、家族みんなの意見を聞いてみたところ、長男の希望は「クリームが少ないの」だそうで。曰く、「誕生日ケーキもあるから、クリームが多いとその時までクリームの感触が残っててつらい」んだそうで。そこまでクリームが嫌いなのか。で、その横で次男が「クリームたくさんがいい」とか無邪気に言っててややこしい話になるのです。あちらを立てればこちらが立たず。
甘い物が好きではない長男。関係あるわけではないでしょうが、頑固者です。冬休みが終わって三学期が始まったある日、学校で「三学期の目標」というものを発表したそうです。それと前後して、学校に行くときや遊びに行くときに上着を着なくなりました。いくら南国九州とは言っても、冬は寒いはずなんです。先日も雪が1cmくらい積もって交通状況大打撃な事態になりましたが、雪が降ろうが降るまいが寒いものは寒いんです。でも上着を着ない。シャツとトレーナーだけで外出します。いくら言っても聞きやしない。いったい何故なのか。その謎は「三学期の目標」の中に答えがありました。
PTA の用事で学校に行く事があった奥さん。長男が通う教室に寄り道したそうですが、教室の後ろに「三学期の目標」が書かれた紙が張ってあったそうです。長男の目標は二つ。一つは「Wiiをあんまりしない」。「あんまり」という点がポイントです。あと、DS はノーカウントである点も。そしてもう一つ。これが問題だったのですが、「上着を着ない」。子供という生物は風の子であり、薄着推奨的な教育をする場合もあります。長男の話だと「朝は教室の窓を全部開けて授業が始まる」という事ですので、「厚着をしていないで、薄着になって外で元気に遊びましょう」的な教育がされているんだと思います。それは基本的に間違いではありません。ありませんが、子供がそれを真に受けて馬鹿正直に実践するとなると話は違います。
雨が降ろうが風が吹こうが、長男は頑なに上着着用を拒み続けました。雪が降ったらどうなるか、ですか?はっはっは。九州の子供たちにとって、雪というものは非日常なのですよ。積雪なんて数年に一度のお祭りなんですよ。ええ、勿論傘もささず、上着も着ずに遊びに行きましたとも。朝から夕方までそんな格好で遊んでいたんで、びしょ濡れになって帰ってくる頃には風邪をひいていました。当たり前だ。
ここまできてようやく上着を着ることに同意してくれました。勿論簡単ではありませんでした。風邪をひいても、それでも上着着用は嫌がる始末。そりゃ、薄着で過ごす事は決して悪いことではないんですが、しかしながら風邪をひいているのに上着を着せないわけにもいきません。「風邪が治るまでは上着を着なさい」と説得するのにかなりの時間を要しました。
初志貫徹といえば聞こえはいいのですが親としては心配でなりません。もうちょっとこう、臨機応変とはいかないのでしょうか。風邪ひいたときくらい、上着を着ても誰も何も言わないって。