汗だくの季節が過ぎ去り、毛布や長袖が恋しい季節になりました。我が家の休日昼食メニューも様変わりしております。何故か好みや希望が分かれる事が多い我が家では、昼食時は二種類の食べ物が出る事が多くなります。夏場であれば、私以外が素麺で、そして素麺嫌いの私が冷やし中華、といった具合に。寒くなってくるとバリエーションは豊かになりますが、それはそれで大変な事になります。昼時になって子供達に希望を聞くと「ホットケーキ!」「スパゲティ!」との反応が。早い者勝ちとかにしてもいいのですが、そうすると片方が拗ねたり泣いたりで大変です。で、ホットケーキを焼きながら、麺を茹でながら、レトルトのミートソースを茹でながら、子供の話し相手をしながら、とやっているとホットケーキを焦がしてたりします。それを見られて「パパ、ホットケーキ焦がしたー」とか責められます。畜生、誰のせいだと思ってやがる。

希望を聞くと大変なので、有無を言わせず事前に準備していたもので押し切る事もよくあります。スパゲティなんかは日持ちがするのである程度備蓄がありますが、生ものなんかは使い切らないと大変です。購入しておいて、しかしリクエストに出てこなかったので冷蔵庫で腐らせるという訳にはいきません。例えば、中華まんは要冷蔵で、しかも賞味期限ギリギリのものを選んで買うので、消費優先度はかなり上です。事前にそんな物を購入している時は、何も言わずに食事の支度をしなければいけません。

コンビニの店頭では多種多様な中華まんが販売されていますが、一般家庭用にはそれほど種類は多くありません。基本はあんまんと肉まん、それに加えてカレーまんとピザまんあたりが殆どでしょう。やたらと製造ラインを増やしても仕方ありません。基本に忠実、ホームランは無くとも三振を避ける姿勢は決して間違ってはいません。それに対してコンビニ向けは、やたらと手を広げています。痒い所に手が届くのも間違ってはいないんでしょうが、しかしそこに手を届かせてもなあ、という場合もあります。コンビニ向けだと、「試しに一つ食べてみる」というのがあるからある程度冒険できるのかもしれません。家庭用だと「試しに一パック買ってみて自宅に帰って蒸してみる」と、些かハードルが高くなりますから。

もっとも、多種多様とは言え、その多くは基本の二種類の応用と考えられます。まずは東の正横綱とも言うべき、肉まんです。豚のひき肉を主軸に備え、脇を野菜類で固める。それらを甘辛く煮たものを具材とする、「辛」側の基本形です。カレーまんやピザまんは具材の味付けを変えたものと考えられます。また、ハンバーグまんやギョーザまんといったものは、具材の形が若干異なる肉まんと考えられます。フカヒレまん等のようなものは、具材が豪華になった肉まんです。これらはコンビニにおいても主力商品の位置づけです。販売棚でもある程度広めに場所を取ってあります。

肉まんに対して、西の正横綱と位置づけられるのはあんまんでしょう。甘い粒餡やこし餡を具材とする、「甘」側の基本形です。クリームまんやチョコまんといった洋風の甘味を具にする場合もありますし、粒餡ではなくウグイス餡を使う場合もあります。しかし、肉まん系統と異なり、こちらはあまり種類は多くありません。粒餡にウグイス餡、チョコにクリームと来て、では他に何があるだろうと考え込んでしまうくらいです。そりゃ、プリンまんとかあるかもしれませんが、少なくとも二シーズン以上に渡って店頭に並ぶような商品ではなさそうです。発展性が無いためか、あんまん陣営は徐々に隅に追いやられている気がします。

購入する側としても迫害されている気がします。店頭に並ぶ中華まん軍団。上から見ると豪華肉まん、肉まん、カレーまん、その他諸々あって、片隅にぽつんと二つだけ蒸されているあんまん。売り切れていない事を確認して注文すると「すいません、まだ出来上がってないんですよ」。まあ仕方ないよね。あんまり売れないみたいだし。たまに無事購入できたとしても後ろに並んでいるOL連中からこんな声が聞こえてきます。
「ええ、あの人あんまん買ってるよ」
聞こえとるがな。なんだその、一応相手に気を使って小さな、囁き程度の音量で笑ってみるもののその相手の背後に立っているんでモロ聞こえな状況は。三十路前のおっさんが昼食にあんまんを食べて悪いのか。お前らなんか、廃棄直前の長時間蒸されたあんまんの表面みたいにぶつぶつ塗れになりやがれ。


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