一年ほど前でしょうか。ニュースにて「携帯電話の会社を変えても、今まで使用していた電話番号がそのまま使える」という情報を見かけました。ここ最近騒がれているMNP(携帯番号ポータビリティ制度)のニュースでした。「電話会社が広告打ちまくり」という状況は、数年前の「マイライン」の騒動を思い起こさせてくれます。当時もCMやらチラシやら、果ては各種キャンペーンやらといろいろと騒がしかったものですが、顛末に関してはとんと聞きません。
固定電話に関しての興味なんてその程度でしたが、携帯電話に関してだと話が違います。当時使用していた携帯のキャリアはJ社、からV社に変わって最近S社になったとこです。伏字の意味がまったくありません。「世界で使える」とかなんとかキャッチコピーがありましたが、「世界で使えて自宅は圏外」と言われる有様です。それくらい通話エリアの狭さには定評がありました。私の場合も、都市部に引っ越してからは多少マシになったものの、引越し前の家だと窓際でないとうまく通話ができませんでした。福岡市近郊でこの有様です。熊本県荒尾市なんて、あの会社にとっては世界の範疇に含まれていなかったのでしょう。実家で携帯を使用する際には外に出ないといけません。冬場はとっとと話を切り上げないと凍えます。友人宅だと、場所によっては完全に圏外です。窓際だろうが地面すれすれだろうが、飛んでも跳ねても圏外です。最も困るのは仕事場です。自分の席まで電波が届いていないので、仕事中はほぼ通話不能です。「自宅駐車場に停めている車のドアが開いていた」「保育園で子供が急に熱を出した」「帰りにキャベツと牛乳を買ってきて」そんな連絡事項も殆ど伝わりません。
そういう不満を抱えていましたが、「キャリアを変えても電話番号を変えたらいろんなとこに連絡するのが面倒くさい」という事情により、しぶしぶ使っておりました。友人連中ならともかく、仕事関連が面倒で面倒で。日々顔を会わせているような相手ならともかく、「年に一回くらいは会うかもしれない後輩」とかの微妙なラインが困ります。わざわざ電話するほどでもないが、かと言って通知しないとそれはそれで後々面倒なことになりそうでして。そんな私に舞い降りたMNPの情報。「あと一年、あと一年我慢すれば」と、制度開始前、準備段階から待ち構えておりました。
で、制度開始後初の週末。必要な書類がギリギリまで届かないなどの出来事もありましたが、契約そのものはつつがなく終了。後日、S社関連はトラブルで事務手続き中止とか聞きましたが、土曜日の午前中に無事逃げ出すことができたので巻き込まれることもありませんでした。端末そのものに関しては、親指一本で開けづらいとか、ボタンを押した感覚が今までと違うといった若干の不満点はあるものの、概ね満足です。わざわざ時計を合わせる必要がないとか、端末横のボタンでマナーモードに切り替え可能だとか。そして、それ以上に通話エリア関連のあれこれで満足です。
エレベーターで、自宅で、そして仕事場でばっちり電波を掴む事ができるとは。今までのように「メールを送信しようとしたけど上手く電波を掴めないんで、端末を持ったまま奇妙な踊りを踊る」事もなくなりそうです。そんな新しい、なかなか圏外にならない携帯電話を手に入れて、最初にすることはというと各種設定です。メールアドレスを「cloud○○@○○」にするためにどのような単語をくっつけるかとか、各画面における文字サイズを最小に設定したりとか。その中でも着メロ関係は大切です。最近では「着うた」なんてものもあり、単純なメロディの代わりに歌が丸々使用できたりするようです。「三和音まで、十六分音符は使用不可、高すぎ、低すぎる音も駄目」なんて時代からは想像もできない進歩です。そんな、128和音だの着うた完全対応だのという携帯を手にして設定した着メロは、相も変わらず十五年程前のゲームの音楽です。いやー、やっぱ十六和音は凄いわ。
MNPの制度開始のしばらく前より、「メリットばかりではなくデメリットもある」という話も出ていました。よく聞いたのが「割引サービスが継続できない」事。ま、そりゃ当然でしょう。あれは「長期間うちと契約してくれてありがとう」な割引なんですから、一見さんに対しても同じだけ安くしてくれると考える方が虫が良すぎます。その他、「事務手数料が多少掛かる」という点も。これに関しては、「二万くらいなら払うから是非解約させてくれ」とまで考えていたので全く問題ありません。例え幾許か余計に出費が必要だとしても、「ちゃんと通話できる」のならば惜しくはありません。そして、それら以上に言われていたのが「メールアドレスの引継ぎができない」点。「メールアドレスは携帯電話会社から配布されてるから、別の携帯電話会社と契約する場合は違うアドレスになるよー。よーく考えよー」みたいな報道をよく見かけました。
たしかに、携帯を使用して頻繁にメールをやり取りする人には大きな問題となるでしょう。各社ともその辺を見越して、「アドレスが変わった場合に関係者に一括してお知らせメールを送信するよシステム」を準備しているようですが、それでも面倒な事には変わりありません。私が「携帯番号変わると連絡が面倒だから解約できない」と考えていたように、「メアド変わると面倒だから契約そのまんま」な人も多数いることでしょう。ですが、この点に関しては全く問題がありませんでした。携帯のメールアドレスが変更となるにあたり、過去一年間にメールを送信した人相手に連絡をしました。総数、二通。「いち、に、おしまい」です。厳密にはこれに加えて奥さんも対象になりますが、わざわざメールで伝える必要が無いためこれで終わりです。面倒とかどうとか以前の問題でした。ちなみに、携帯電話の本来の仕事である通話は奥さんと「迎えに来て」「迎えに来たけどどこにいる」とやり取りした程度。俺、電話いらないんじゃなかろうか。