しばらく前より、とあるネットゲームに興じております。以前は「雑文書きがネトゲにはまると更新しなくなる」と言われていましたが、なるほど、自分がその立場になってみるとたしかに更新が面倒になります。
私がやっているのは「Magic Work Station」(以下MWS)。厳密にはこれでゲームをするわけではありません。こいつでゲームの準備を行い、付属のツールを利用して対戦するようになっています。ゲームの内容はというと、私が青春と情熱と当時の一財産を注ぎ込んだ「Magic: the Gathering」(同じくMtG)です。MtGでは現在数千種類あるカードの中から数十種類のカードを選び、実際に使用するカード群を作成します。何種類かのルールによって、使っていいカードなんてものもありますが、それらのルールに従い最低六十枚の「デッキ」を作り上げます。MWSを使ってこのデッキを作成し、ネット上で対戦相手を募集し、付属ツールで専用サーバに接続して個別に対戦。この間、基本的に無料。通信費用くらいしかかかりません。素晴らしい。
前世紀の終わりくらいだから、かれこれ八年程前になるでしょうか。MtGのPC用ゲームソフトという代物が発売された事がありました。基本的にはCPU相手に勝負をするのですが、ネットワーク接続ができれば対人対戦も可能でした。しかし、当時の通信費用を考えるとおいそれとは外に出て行けません。回線が細いのでデータの送受信に時間がかかり、PCのスペックの問題で処理待ちで時間がかかり、その間どんどん費用がかさんでいく。定額制なんてものが存在しない時代です。勿論、テレホーダイ等のサービスはありましたが、「テレホタイムは混雑して当然」と考えると、やっぱり実用的ではありません。結局、そのソフトは購入こそしたものの一人プレイ専用となり、オンラインでの対人対戦は経験できないままでした。
それから数年。MtGの販売元がオンライン対戦用のソフトを販売したと聞き、実際にプレイしてみた事がありました。たしかにオンライン対戦ができます。できますがしかし。使用可能なカードを追加するのにリアルマネーが必要とはどういう事だ。そう、そのゲームでは、実際にカードを購入しないと使用可能なカードが増えないのです。オンラインの癖に。バーチャルの癖に。現金が必要ならば実際のカードを購入するわい。という事で、このゲームも数回起動しただけでアンインストールされることになりました。
それからさらに数年。今年の話です。ひょんなことからMWSの存在を知りました。これです。これこそが私が求めていた物です。ゲームは無料。どこにも費用はかかりません。厳密にはMWSそのものがシェアウェアではありますが、永遠に試用期間で済ませることもできるんで問題ありません。カードはいくらでも使えます。私が現役時代に使っていたカードも、当時欲しかったけど手に入らなかったカードも、引退後に登場したカードも、そしてプレミアが付いて一枚十万円を超えるようなカードも、いくらでも使えます。当時作ったあのデッキ、その理想系であるこのデッキ、ロマン溢れるそのデッキ。そんなものが無制限に作れます。その気になればテキストエディタだけでもデッキ作成ができます。カードリストさえあれば、仕事中にだってデッキ作成が、いや、あの、その。
で、今夜も対戦なのです。ついつい夢を追ってしまうので勝率はあんまり考えたくなかったり、作っただけで使ってないデッキが多かったりしますが細かいことは考えません。趣味ですから。これが実際のカードだったら「あのカードが欲しい、よし、あと三パックばかし購入だ」とかなって向こう数日間お昼抜きになりますが、使えるカードは無制限。「あのカードがいいな、よし、交換だ」とテキストエディタを動かすだけで済みます。で、微調整しながら対戦していたのですが、その対戦相手からチャット画面にこんなコメントが。
「テスト前なんで親が切れかけてる。悪いけどお開きで」
まさか大学の試験前でお母さんブチ切れという事も無いでしょう。となると、相手は高校生以下。だいたい十歳くらい年下です。他にも、私が現役時代に普通に使っていたカードを使ってみたら「そんな古いカードは知らない」と言われたり。対戦した相手とゲーム終了後に雑談した事が何度かありましたが、どの相手も私の引退後に始めていました。よく考えてみると、既に古参と言われてもおかしくないんですよ。「あのカードが実際に使われていた時代を知る人間」という感じで。直接対戦相手の年齢を聞いているわけではありませんが、どうも同年齢くらいの相手は殆どいないようで、大部分は年下。極端な例では十歳も年下だったりするわけです。そう考えると本気で対戦しているのは無邪気なのか、はたまた大人気ないのか。オンライン上だからいいものの、実際に直接対戦するとなると大変でしょうな。片や高校生。片や三歳児を膝に乗せたおっさん(三歳児の邪魔あり)。シュールな光景です。って、それはまさに近所のスーパーで行われる「ムシキング親子タッグマッチ」にてよく見られる風景でした。違うのは対戦相手が十歳年下ではなく二十歳年下なだけです。