分譲マンションなんかを購入したりすると、入居者全員が対象の集会があったりします。長期の修繕計画に対しての賛否だの、「えれべーたーはきれいにつかいましょう」だの、そういうあれこれを決めたり伝えたりする集会です。
大規模な地震が発生した後には、「このマンションは建て替え派と修理派が揉めてて工事に着手できなくて云々」なんてニュースがあったりします。「入居者の何割以上の賛成がないと工事しちゃ駄目よ」という法律のせいでして、最近では耐震強度が不足していたマンションなんかでもそういう集会がありました。まあ所詮は他人事、どっちに決まっても私には関係ありません。
現在私が住んでいるマンションは、平成になってから建てられたものでして、比較的新しいとは言え既に築年数は十年を超えています。数年後にはある程度大規模な改修工事も予定されているそうです。で、現状の修繕積立金の残高ではとても予定されている工事は行えない、ちっと余計に金を出してくれんか、というのが今回の議案だそうです。
自分の住処なのにまるで他人事のような書き方ですが、実際他人事なんです。これが「分譲マンションをローン組んでガッツリ買いましたよ」という事ならば真面目に考えるでしょうが、我が家は賃貸契約で入居しております。修繕積立金がいくらになろうと、それが家賃に反映されるわけではありません。多分。いや、いきなり「修繕積立金が月十万増えたんで、そのうち半分を家賃に上乗せ」なんて言われない保障はないと思いますが、さすがにそれは無茶です。その辺の法律を詳しく知っている訳ではありませんので断言できませんけど、ないよね。
で、何故か無関係な私が出席していたりします。「引っ越したばっかだからやっぱちょっと顔出しとかないといかんかな」とか思いながら案内の用紙に出席と書いたわけですが、その翌日に「できれば賃貸入居者の方も出席してくれると嬉しいな(意訳)」なんて用紙がやって来て「じゃ、ひょっとして出席の必要は無かったのか」と気付いた私がです。しかし出席状況を見ると、私の挙手が議題の可決を左右しかねないのですが。いいのか、家主。ここで俺が無茶な提案をして「修繕積立金が一気に五倍」なんて事になっても責任は取らんぞ。勿論、そんな事はなくただ淡々と下を向いて黙って、必要なときに採決の挙手をしただけで終わったのですが。
が、淡々と必要事項の連絡のみであれば三十分でお釣りが来る様な集会でも、何故か一時間二時間と時は過ぎていきます。前世紀にベストセラーとなった「マーフィーの法則」。その中の一節に「どんなに簡単に説明をしても、馬鹿には伝わらない」というものがあります。正確な文章は忘れましたが、意味はだいたい合ってたと思います。「馬鹿にも理解できるように説明をしなければならないが、どれだけ説明をしても馬鹿は失敗する」という意味だとすると、これはフールプルーフの必要性を述べた物だと言えます。が、「どんなに簡単に説明しても、馬鹿は難癖を付けてくる」という意味だとすると、これはクレーマー対策に属するものでしょう。
クレーマーも、百人中百人が「こいつは難癖を付けている」と理解できるような相手ならば、返ってやりやすいのかもしれません。問題は、本人は善意で、もしくは若干の善意があってやっている場合。例えば、とっとと集会なんて終わらせて帰りたいのに「私が仕事をしていた頃は」とか、「私が聞いた話では」等と全て自分のことに矮小化して難癖をつけてくる人間。そりゃ、あなたはいろいろ言いたいこともあるでしょうが、その前に空気を読め、と。その問題に難癖つけてるのはあなただけですよ。さっきあなたが口を開いたときにみんなの口からため息が漏れたのは聞こえませんでしたか。
しばらく前の出来事でしたからよかったものの、最近話題のエレベーター事件の後だったら、きっとその件に関してもやいのやいの言ったんだろうなあ。
「エレベーターの補修に関してはどうなってますか」
「その点検項目に関して、私たちは確認はできないんですか」
「いや、その業者は信頼できるんでしょうけど、例えば、例えばですよ。私が聞いた話では……」
こんな塩梅。なお、このあと説明を聞いて、その説明に対しての倍返しが待っています。勘弁してくれ。
結局独演会状態となり、管理会社の人も苦笑い気味ではありながらも上手にあしらい、そんなこんなで無事終了。結局私が出席した意味は見出せないまま、二時間は無為に過ぎ去っていきました。ま、次回以降は欠席なんでいいや。