ものすごく小さい、精密機械の部品だか何かを作っている人たちが、街中で「米粒くらい大きい」という言葉を発して怪訝な顔をされた、という話があります。普通の人にしてみれば「米粒」という単語は「小さい物」という意味を持ちますので、先程の言葉には当然違和感を覚えます。ですが、その人たちにしてみれば「米粒なんて、そこに字が書けるくらい大きい」という認識ですので、先程の言葉のようになります。大分意味が違うかもしれませんが、職業病のような物かもしれません。

職業病とは「従事している職業の特性や職場環境により起こる疾病の総称」だそうで。例を挙げるとデスクワーク従事者の肩こりや腰痛、肉体労働者の腰痛、とにかく腰痛と、いや、勿論腰だけじゃありませんが。近年日本中を騒がせているアスベスト関連の疾病も職業病の範疇に入るでしょう。ですが、そういう肉体的な疾病の他にも、精神的、もっと言えば思考的なものもあるのではないでしょうか。先程の「米粒は大きい」と考える人たちのような。

それとこれと関係があるのか知りませんが、日常生活の中で「この機械はどういうロジックで動いているのだろうか」とよく考えます。一体いつからなんでしょうか、自分でも分かりませんがふとそういう事を考えていたりします。

例えば駅の自動改札。大人と子供とを判別しているのは何なのか。体重で判別、というのは多分無理でしょう。個人差がありますし、なにより子供が重い荷物を持っていたときは誤作動します。まさかどこぞで見た「お毛毛判定機が組み込まれている」なんて事はなさそうですし、それだって個人差があります。駅員の目視に頼るにしても限界があるでしょう。と、考えるときりがありません。

駅の自動改札というと、切符や定期が自動で精算してくれるのも不思議です。いやね、「ここからここまで」という単純な路線だったらいいんですよ。「ここからここまで定期を使用。それ以降で乗り越し」なんて場合、内部でどういう処理をしているのかが分かりません。内部にフラグを持っていて、任意の区間内ではこれだけ、なんて処理をしていた場合はその区間内に駅が追加された場合の修正内容が面倒な事になりそうです。かといって、各駅ごとに厳密に料金設定がされている、というのも考えにくいわけでして。

考え出すときりがありません。機械に興味を持った子供ならば、分解すればその知的好奇心は満たされるかもしれませんが、私の場合分解しても意味がありません。所詮「0」と「1」の組み合わせではありますが、まさか機械の中を「0」と「1」が走り回っているわけでもありませんし。それに、単純に状態の変化を見たいわけではなく、入力と出力の関係が知りたいわけです。「こうしたからこうなった、ばんざーい」ではなく、「こうした事によってこういう処理が行われてこうなった」という事が知りたいのです。

世の中には様々な機械が動いており、その中では様々なロジックが動いているのです。
何故、あのレジでは「精肉三パックで980円」という例外処理がきちんと動くのか。どういう設定でどういうロジックでそういう処理になるのか。
何故、このゲーム機で動いているこのゲームは、このボタンを押すとこういう動きをするのか。どういう設定でどういうロジックでそういう処理になるのか。
何故、この巨大ロボットはハンドルとペダルであんな複雑な動きをするのか。……これは「動くんだから仕方がない」と言われれば納得しそうだ。
まあ、そんな具合に、わざわざ積極的に正解を知ろうとはしないけど勝手に想像しているわけです。

ああ、そこの人。正解を言わないで。「駅の改札はこういう仕組みなんだよ」なんて教えないで。こうやって考えてるのが楽しいんだから。


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