世の中では「クールビズ」とかいうものが流行っているそうです。
猫も杓子もクールビズ。
食前食後にクールビズ。
一家に一台クールビズ。
「来週からクールビズであなたもヤングとフィーバー」「クールビズでマブいギャルのハートをゲット」なんて週刊誌の小見出し風な文章まで浮かんできます。ところで、「今、クールビズがアツイ」だと暑いのか寒いのかよく分からない言葉になりますね。いや、どうでもいいんです。ええ、どうでも。
私の仕事場でも、そのクールなんたらという運動に取り組んでいるようです。やれ空調は二十八度までだの、やれネクタイなしの格好で仕事だの。別にそれが悪いとはいいません。地球温暖化だの、化石燃料の節約だの、京都議定書発行だの、いろいろと理由もあります。くそ暑い時期にくそ暑い格好をして冷房をガンガン効かせるということが非効率的だということも分かっています。
今まで一般的な日本のオフィスでは、空調権は殆どの場合において暑がりな人間に独占され、その結果「冷房の設定温度は二十度」なんて事態になっていました。そのため、冷え性だったり寒がりだったりする人間には非常に厳しい労働環境でした。若かったり若くなかったりする女性が肩から一枚上着を羽織っていたり、ひざ掛けを掛けていたりという光景もよく見られました。
それを考えると、暑い時期に薄着をして冷房の設定温度を上げるというのは理にかなっています。わざわざエネルギーを使用して気温を下げるより、エネルギー消費を節約してその環境に適応する方が効率的です。ついでにもっと効率的にするためにシエスタの時間まで導入していただければ嬉しいのですが。いや、昼飯食ったら眠くなるんだから。どうせ昼休み後しばらくはウイルスチェック中で仕事にならないんだから。
それはさておき薄着で仕事。まだまだ導入から日が浅いためか、周囲の服装はそれほど変化がありません。せいぜいネクタイがない人間がちらほらいる程度。それに、客先に出向いたりする人間は結局それまでと同じような格好をする必要があります。誰か一歩目を踏み出さないといけないんでしょうか。こう、作務衣で仕事するとか。いいじゃないですか。浴衣着て仕事するとか、風情があって。よっしゃ、ここは一つ私もTシャツに短パンというはだかの大将ルックで仕事を……できるか。
所詮は居候の身です。自社に出社しなくなって何年が経過するのかさっぱり覚えちゃいないくらいであっても居候なのです。「地図を見ず、電話もせずに自社に出社しろ」と言われて迷子にならない自信がないくらいであっても居候なのです。居候期間が長すぎて、さらに居候先に社員は転勤やらなんやらで出入りが激しくて、結果として古参の人間と化していても居候なのです。で、居候だから遠慮しなければいけません。古来より、「居候 三杯目には そっと出し」と言います。つまり、居候は目立たないようにおかわりしないと二杯までしか食べられないのです。違うか。
目立たないように、それまでと同じ格好で仕事をしております。ワイシャツを着てネクタイをはめ、ジャケットは椅子に掛けておりますが、まあ普通のサラリーマンの格好です。で、この格好に何か問題があるかというと、とにかく暑いのです。冷房の設定温度は上がっているのに従来どおりの格好。しかも運悪く席替えがあって内陸部に移動したため、PCの廃熱やら人間の体温やらで、もう汗だくですよ。何が悲しくて冷房が効いている「はず」の室内で汗だくで仕事をせねばならんのか、と。
そりゃ、好きでネクタイやらはめてる人はいいでしょうよ。ネクタイ大好き星人なんでしょうから。しかし、私はネクタイは嫌いなんです。社会人生活もかれこれ六年目になろうというのに未だに上手にネクタイを巻けないくらい嫌いなのです。できればこんな物取っ払って仕事したいのですが居候なんで我慢してるんです。しかし、ネクタイも我慢して、その上で汗だくまで我慢するのは大変です。そもそも「暑い」と感じているのは私だけではないんですから。昼休みになれば、団扇で自分を扇ぎながら椅子にもたれ掛かっている人がいます。仕事中はため息と共に「暑い」という声が聞こえます。
あれか、このクール何とかとかいうのは、我慢比べか何かなのか。それとも「これくらいの暑さがどうした。Coolに仕事しないと駄目」とかそういう意味なのか。クールに仕事させたいなら、せめて廃熱だけでもなんとかしろ。一人一台のPCに加え、サーバ機やコピー機まで存在する空間で何故忍耐を養わねばならんのだ。