ここは友人の部屋。しかし、この場にいるのは私と別の友人のみ。家主はまだ帰宅していません。
八月十四日。日本中がテレビでオリンピック観戦をしている頃、私と友人はこの部屋にやってきました。家主からは「日付が変わる頃には帰宅するんで勝手に準備してて」と言われているので問題はありません。仮に許可を取っていないとしても問題ありません。この部屋はそんな扱いをされる部屋なのです。
今日は皆で「Catan」というボードゲームをやるためにやって来ました。本来はこのゲームをネタにしようと思ったのですが、全員が初心者でルールも手探りという状態ではネタにするほど面白いこともおきず。いや、ゲームそのものは非常に面白かったのですが。ゲームが面白かったとしても、それをネタにした話が面白いかというとこれはまた別の問題ですので。で、家主が帰ってくる、すなわち対戦者が揃うまでのお話です。
家主は帰ってこない。柔道は金メダルを取った。実家から強奪してきたビールはまだ冷えてない。暇つぶしに対戦しようにも「Catan」は三人以上四人以下推奨というゲーム。何もやることがありません。何もやることがないので、仕方がないからエロ本でも探すことにします。いつもの事です。この部屋はそんな扱いをされる部屋なのです。
と思ったのですが。いつもそんな書物が隠されていたベッドが買い換えられていたために、隠し場所がわかりません。しかしまあ、でかいベッドを買いやがって。そんな金があるならいい加減クーラーを買いやがれこの野郎。と、友人共々愚痴りながらも、ベッドの下やら押入れの中やらを探ります。ええ、いつもの事です。本当にいつもの事なんです。
しかし、どこを探しても見つかりません。レンタルされてきたDVDのケースも見つけましたが、中に入っていたのは普通の映画。期待させやがってこの野郎、「パイレーツオブカリビアン」だと、そんなものは求めておらん。エロを出せ、エロを。決して酔っているわけではありません。この部屋においてはごく普通の行動なのです。
本当に見つからないので諦めていたのですが、友人は棚の上から一冊の書物を見つけ出しました。写真集というやつです。ちょっと期待しましたが、しかし残念ながら水着の写真集でした。ぱらぱらとめくって「ああ、おっぱい大きいねー」などと語るだけでそのまま棚に戻されるはずでした。なんとなくページをめくっていると、その写真集の帯が挟まれていました。書物の帯というと、いろいろなキャンペーンの宣伝だったり、はたまた「あの○○さんも大絶賛」なんて煽り文句とともに毒にも薬にもならないコメントが書いてあったりと、まあどうでもいいようなものです。どうでもいいわりには貧乏ったらしく本に挟みつづけてしまうため、本棚に片付ける際にうっかり破ってしまったり、子供たちの手によってぐちゃぐちゃにされたりという運命を辿ってしまうのですが。
とにかく、その写真集の帯です。煽り文句がいろいろ書いてありましたが全てを覚えているわけではありません。私にはその一言だけで十分でした。
「13歳」
いやいや、戦後は遠くなりにけりと言いますか、栄養事情がよろしゅうございますねと言いますか。十三歳といいますと中学生ですか。平成生まれですか。それにしてはまあ、ご立派なものをお持ちで。ほほう、Eですか。それはまた素晴らしい。
と、わけのわからないやり取りを脳内で繰り広げてみたわけですが、ここで一つの疑問が出てきました。
「奴は『E』と『13歳』のどちらに惹かれたのだ」
『E』であれば理解できると言いますか、「同士」という言葉で済みますが、『13歳』の方ですとこれはこれでちょっとどういうことだ貴様、となります。なりますが、問いただすのも面倒だったんで勝手に同士であるということにしておきました。やっぱ大きいのは世界を救うんですよ。
その証拠に。「13歳」に衝撃を受け、それを友人に見せて同じ衝撃を与え、改めて観賞していたときのことです。
いやー、しかし凄いね。
「うーん、十三歳かあ」
ちょっと分けてほしいなあ。
「あ、俺も。半分ずつにしよう」
ああ、いいですな。半分こ。
ご覧のとおり。平和に分割。仲良く分割。でも、「俺は右、お前は左」なんて分割はちょっと勘弁。そんなアンバランスな分割は嫌だ。