暑い時期になりました。昔と違って、「毎日夕立が降る」なんて事が無いような気がするのは気のせいでしょうか。私が朝から晩まで建物の中にいるんで、ひょっとしたら私が気付かないうちに降ってるのかもしれませんが。

雨がそんなに嫌いではない私ですが、夕立は別でした。せっかく外で遊んでいるのに中断しなければいけない。しかも、時間的にそれ以上遊びを継続する事もできない。結局、その日の遊びはそれで打ち切り。「夕立が降らなければもうちょっと遊べたのに」というやり場の無い気持ちで一杯でした。

夕立というと、何故か「どしゃ降り」というイメージがあります。どしゃ降りというと雷です。そんな訳で、今回は雷のお話。

小学生の頃、水泳教室に通っていた時期がありました。あれは三年生から四年生の頃だったと思います。無論、温水プールなんて影も形もありゃしないので夏限定です。

二年間通ったおかげで、それなりではあるものの泳ぐ事はできるようになりました。もともと体力があるほうではないので遠泳とかはできませんが、父親の立場になって、子供と一緒に海で遊ぶ程度ならば不自由はしません。その水泳教室も、「未来のオリンピック選手を云々」なんて気合が入ったものであるわけでもなく、和気藹々とやっておりました。

その水泳教室には同じ小学校の友人達もいました。となると、行きも帰りも一緒に行動するようになります。いつもは自転車でプールまで移動しますが、雨が降ったときなんかは車に乗せてもらったりもしました。

ある日。夕立とはちょっと違いますが、どしゃ降りとなり、雷まで鳴りだしたんで水泳教室が中止となった日の事。急な雨ではありましたが、いつものように同行した友人宅の車に同乗して帰宅する事にしました。

間もなく私の家にたどり着こうという時、進行方向のほうに雷が落ちました。いつもなら「いやー、凄いねえ」程度で済みますが、場の雰囲気のせいか一人の友人が私に向かって「あっ、今の雷はお前の家に落ちたぞ」と言いました。無論、冗談です。こちらも笑って返しました。

それから間もなく家に着きました。勿論、雷は落ちていません。が。言霊って怖いですね。プール帰りなのですぐに風呂に入り、夕飯のサラダに使うきゅうりを切っていたときのことでした。決して上手とは言えない腕前ですが、それでも半分ほど切り終えた時。

物凄い衝撃がありました。思わず包丁を落としそうになるくらい。軽く身体が浮いたような感じがしましたから。で、それと同時に停電。さらに、居間から妹達の泣き声が。

何が起きたか分かりませんでした。まさか、自宅のテレビアンテナに落雷したなんて考えるはずがありません。また近所に落ちて、その影響で停電してるんだろう。しばらく放っておけば元に戻るはずだ。そんな風に考えていました。

それから一時間。明らかにおかしい事に気付きます。外を見てみると、停電しているのは我が家だけ。他の家の停電は直ったようです。

事態が把握できたのはそれからさらに数時間。父が家の裏で、屋根から落ちたテレビアンテナを発見しました。なるほど。あの衝撃は落雷によるものだったのか。妹達が泣き出した原因となったテレビ裏の出火も、落雷が原因だったのか。我が家のブレーカーが壊れたのも落雷が原因だったのか。推測ながらも全ての現象に説明がつきましたが、説明できたからといって事態が好転するものでもありません。

別の疑問も浮かんできます。「雷は高いところに落ちる」というのは常識とされています。そのため、落雷の際は姿勢を低くしたり、高い木の側は離れるように言われています。しかし、我が家の隣家は一段高いところにあります。当然、そちらの家のほうが高いわけで、それなのに何故我が家に落雷があるのか、と。雷様のきまぐれでしょうか。

そんな、自然現象やら言霊やらの仕業で被害にあった我が家でしたが、保険のおかげでテレビが大きくなったり、ビデオが購入できたりといい事もありました。また、私もいろいろと学ぶ事ができました。その一つが「もう俺には落雷の心配はないから雷なんて怖くない」というものです。世の中には様々な人がいますが、人生の中で落雷の被害に遭った人というのはそう多くないと思います。ましてや、それが複数回ある人なんて一握りでしょう。そう考えると、私にはもう雷とは縁の無い人生をおくることができるはずです。大昔には「何度も落雷の被害にあって、死んだ後も墓に雷が落ちた」なんて人もいますが、それはごく稀な例外でしょう。

え?もしもう一度落雷したら?そりゃ、もう、開き直ってネタにでもするしかないでしょ。


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