我が家の子供達は車の玩具が大好きなようです。長男が三歳となった現在では、我が家には大小合わせて十を超える車の玩具が転がっています。
長男が小さい頃は玩具なんて殆どありませんでした。しかし、成長していくに従いいろんなところで玩具を手に入れる機会がありました。お誕生日プレゼント、お子様ランチのおまけ、隣の家のお兄ちゃんから貰った等、様々な経路からコレクションは増えていきました。次男はその恩恵を受けて、一歳前から車の玩具で遊んでいます。本能的なものなのか、はたまた単純にお兄ちゃんの真似なのか、詳しいことは分かりませんが車の玩具を手に持ってはハイハイしながら遊んでいます。
長男の多数のコレクションの中にはお気に入りとそうでないものとが混在しているようです。前者の代表例は救急車とパトカーのセット。確かお婆ちゃんにプレゼントしてもらったものだったと思いますが、作りがしっかりしているおかげかほぼ無傷の状態で遊ばれています。最近は次男が遊ぶ事が多いようですが、時々思い出したようにその次男の手から奪い取って遊んでいます。次男も負けじと再度奪い取りにかかりますが、まだまだお兄ちゃんにはかないません。
そんな長男ですが、だんだんと手動から電動の方に興味が湧いてきたようです。お隣のお兄ちゃんと遊んでいる時に、そのお兄ちゃんの持っている玩具の中からラジコンを見つけた事、そして公園で一緒に遊んでいたお友達がラジコンで遊んでいた事。これが彼の好奇心を刺激したようです。公園のお友達は貸してくれなかったようですが、お隣のお兄ちゃんと遊ぶ時はいつも勝手にラジコンを持ち出していました。彼にとっては「自分で触らなくても動く。自分で操作したら動く」というのが衝撃的だったようです。
丁度、五月の連休前。五月の連休というと「子供の日」というものがあります。おねだり、と言いますか、たかるには格好の理由付けができます。幼少の頃の私はおねだりをしても「お誕生日のプレゼントに」などと適当な理由をつけられていたんですけどね。ああ、孫の立場っていいな。しかし、単刀直入に「ラジコンを買ってやってくれ」と言うのもちと気が引けます。どうしたものかと考えていたところ、向こうの方から理由を作ってくれました。
連休中は私の実家に滞在していました。その際、いくつかの玩具も持っていきました。勿論、その中にはいくつかの車の玩具も含まれていたのですが、そのうちの一つを私の父が壊してしまいました。うっかり踏んでしまった、という状況です。父にしてみれば「孫が大事にしている玩具を壊してしまった。どうしよう」という心境でしょう。しかし、当の息子は平然とした様子。壊された玩具は最近お気に入りリストから外れていた玩具でした。
しかし、これはチャンスです。絶好のチャンスです。息子に言い聞かせるふりをしながら父にも聞こえるように言いました。
「あらら、お爺ちゃんが壊しちゃったの。じゃ、お爺ちゃんにラジコン買ってもらおうか」
父にしてみれば謝罪代わり、息子にしてみれば憧れのラジコン、私にしてみれば出費なし。誰も損をしない解決策です。父が圧倒的に損をしている気がしますが気にしないで続けましょう。かくして、息子は子供の日に、憧れのラジコンを買ってもらいました。パトカーのラジコンです。走らせるとサイレンが鳴る代物です。家に戻った息子は大喜びで遊んでいました。
あれから半月ほど経過したある日。仕事から帰宅した私に相方が言いました。「ラジコンが壊れたみたい」と。そんなに脆いのか。いや確かにまだ上手い事操作できないから襖や扉にガンガン当ててるけど、それにしても脆すぎやしないか。相方曰く、電池を入れ替えても動かないとの事。とりあえず、現物を見てみないと詳しい事は分かりません。配線が切れた程度ならハンダ付けすればなんとかなるかもしれませんが、一部回路の破損なんて事になると自力の修復は不可能です。
飯を喰らい、風呂に入ってから様子を見てみます。スイッチを入れて操作をしてみましたが、たしかに動きません。電池を入れ替えたそうだけど、まさか+と−が逆じゃないだろうな。電池の様子も見てみましたが、入れ間違いというわけではない……って、あれ?
この電池、セロハンが巻かれたままなんですけど。このままじゃ、そりゃ動かねえだろ。セロハンを取り、スイッチを入れてから操作してみると無事に動き出しました。故障じゃなかったようです。やれやれ。
かくして、今日も我が家ではパトカーが走っています。最近右や左に曲がる事を覚えたパトカーは、ぬいぐるみや他の玩具への体当たりを行いながら、縦横無尽に走っています。そして次男は嬉々としながらぬいぐるみや他の玩具を乗り越えてパトカーを追いかけています。平和なのはいいのですが、あんな乱暴な運転ではやっぱり近いうちに故障しそうです。