深夜の通販番組が宝の山である事は今更語るまでもありません。怪しいダイエット器具や万能包丁、不思議な洗剤にパソコンセット一式と、いろんなものが売ってあります。

わざわざそんな番組を見るという事はそうありませんが、例えば深夜なんかで特に興味をそそられるような番組が何も無い時間帯があります。CSに目を移してもニュースも音楽番組もスポーツ番組もアニメも興味なしとなると、ここで無料放送中の各種通販番組にチャンネルが合わせられます。

そういう時はだいたい電化製品関係のチャンネルを見ていますが、たまに他のチャンネルを覗いてみるとこれまた様々なものが。たまに見ているといつも宝石を売ってるような番組とか。無料放送が成立している以上、ある程度需要があるんでしょうな。しかし宝石ってあまりそういう番組に向いていないような気がします。

この手の番組というと、「ほーら、腹筋が火を吹いてきただろう」なんてセリフに代表されるような、「とにかく豪快、ダイナミックに視聴者に訴える」という印象があります。動的な売り文句とでも言いましょうか。包丁だったら「ばっさり切れる」、ダイエット関係なら「がんがん痩せる(でも効果には個人差がありますよ)」、パソコンだったら「がんがん壊れる」といった感じです。壊れちゃいかんか。

しかし、宝石や服の類だとこの手の方法は取れません。宝石に対して「がんがん光ってます」と訴えても購買層は動きそうにありません。かと言って、「がんがん叩いても壊れません」と訴えてもやはり動きそうにありません。結果として「とても上品な輝きですね」とかいう感じの静的な売り文句になってしまいます。たまには「これで旦那様もメロメロに」なんて感じの別方向にダイナミックな売り文句も見てみたいものです。どんな物を売りつけるのか分かったもんじゃありませんが。

先日、就寝前の事です。そろそろテレビを消そうとしていると、通販番組が始まりました。どうせすぐ寝るし、という事でテレビを見ながら歯を磨いていたのですが、ちょっと変わった感じの番組でした。普通だと、通販番組御用達といった感じのタレント、競走馬でいうと最終レースの常連といった感じの人たちが出てきます。なんかよく分からない例えですが気にせず続けます。んで、そういう人たちが驚いたり、驚いたり、時には驚いたりしながら商品の紹介をしていくのが一般的だと思うのですが、その番組は違いました。アニメ調に始まったのです。一コマ一コマを映しながら、セリフは誰かが喋ってるという状態です。なかなか珍しい出だしです。少なくとも、私は初めて見ました。

そのアニメ、と言うか商品紹介の簡単なあらすじはこんな感じです。私と相方の電動歯ブラシがういんういん唸っていたので正確なセリフは聞き取れていませんが、そんなに大外れもないでしょう。

田舎っぽい感じの家に嫁いで来たAさん(仮名)。慣れない環境ながらも優しい舅に支えられ、日々を暮らしておりました。しかし、その舅は亡くなってしまいます。病死だか怪我だが、急死なのか老衰なのかは分かりませんが、とにかく亡くなります。悲しみながらも葬儀の手伝いをしようとするAさん。しかし、そこに姑が声をかけます。曰く、弔問客を迎える立場なのに着物の喪服でないのは何故か、そんな格好では我が家の嫁としては云々、と。周囲を見ると、姑も旦那も、親戚っぽい人たちも皆が着物です。姑はなおも続けます。そもそも嫁に来る際に喪服ぐらい用意してくるのが常識である、と。このままでは優しくしてくれた舅の葬儀に出られない。旦那も手伝ってくれますが、姑の考えは変わりません。Aさんはやむなくその場を離れ、涙ながらに実家の母に電話をかけます。「結婚する時に喪服の事なんて言ってくれなかったじゃない」と。

相方と私の共通した感想は「何から突っ込めばいいんだろう」でした。それはさておき。五分ほど続いてようやく商品説明が始まりました。その商品とは。「喪服一式 夏冬21点セット」です。そんなもん通販で売るな、と。誰が買うんだそんなもん、と。Aさん、こんなもん買ってたとしても、姑から「こんな安物では云々」とか言われるんじゃないだろうか、と。残念な事に、商品説明が始まった直後にテレビを消したため、売り文句とか値段とか、あとオマケに何が付いてきたかという事はわかりません。見逃した今ではオマケが気になります。しっかりした作りに見える数珠でしょうか。はたまた「これでバッチリ☆ 葬儀のマナー二十一の秘術」なんて民明書房風味の漂う本でしょうか。まさか、「すぐにご利用になれるように」という事で藁人形三点セットなんてものはないでしょうが。


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