「子供に見せたくないテレビ番組」というアンケートがあります。古くはドリフを始めとするお笑い系の番組がその栄誉に輝いていました。時は流れて二十一世紀。現在PTAやら何やらの目の敵にされている番組というと、あれです。「クレヨンしんちゃん」です。多分。いささか古いデータなんで、最新の調査結果では違う番組になってるかもしれませんが、それでもおそらく上位には喰い込んでいる事でしょう。

親が「子供に見せたくない」と思う理由も頷けるものがあります。「下品である」だの、「母親を呼び捨てにしている」だの。私としても、「そもそも『しんちゃん』という呼び名は私の本名に限りなく近いため、息子が『しんちゃんしんちゃん』言っているとまるで自分のことを言われているようだ」という理由にて、あまり好きな番組とは言えません。ああ理不尽だともさ。

理不尽はさて置き、「子供が下品な言動の真似をする」というのは問題です。いずれ息子も素っ裸で尻振りダンスを踊って怒られたりするんでしょう。ま、子供というものはそういう生き物だと思えば腹も立ちませんが。

「素っ裸でダンス」というものは、おそらく子供はわざとやるんでしょう。大人たちの反応を見るために。これは大丈夫かな、じゃあこれはどうだ。そんな具合にちょっとずつエスカレートしていずれ怒られるんでしょう。そういう悪意、というか意思のある行為はともかく、問題は悪意のない行為です。

週末の夜。我が家では風呂に入ろうかという時間帯。そんな時間にあるアニメが放映されています。中身に関してはよく知りません。相方からかいつまんだ話を聞くぶんにはどうでもいいとしか判断できないような代物です。

中身はどうでもいいんです。問題はタイトルです。正式名称「ボボボーボ・ボーボボ」というその番組を見た翌日に近所のお婆ちゃんと息子がお話をするとします。もうすぐ三歳の彼はまだ正確にタイトルを憶えていません。そうなると、「昨日は何をしたの?」との問いに「ボボを見た」なんて素っ頓狂な返事を返しかねません。いや、『見た』であればまだ救われます。「ボボボボをした」等と言われた日には、「あの家は小さい子に何をやってるのだろうか」などと後ろ指を指されます。

全国的には問題ないのかもしれませんがここは九州。はるか昔、と言っても戦後ですが、プロレスラーのボボ・ブラジルがやって来たときはその名前を放送できなくて困ったと言う話も残されています。この時は「そのまま放送した」という説と「改名して放送した」という説を聞いた事があります。後者はともかく、前者は「『額が割れて、ボボが、ボボが激しく流血しています』という放送を聞いたご老人が倒れて病院に担ぎ込まれた」という伝説があるとか。いや、まずいだろ。九州でボボ。念のため解説しておくと、九州方面の方言で言うところの「こうまん」とか「おめこ」とかそういうあれです。

さて、ここで考えたのが「ぼぼ」という言葉の扱いです。息子としては悪意なんてものは当然あるはずがありません。九州以外であれば問題にすらなりません。九州人が聞くからこそ破廉恥とかそういう感想を抱くわけですが、それならば九州人以外ならば、もっと言えばインターネット関連のあれこれはどういう判断をくだすのでしょうか。今や小学生であってもネット経由でお手軽に無修正エロ画像が見られる世の中です。一般向けのフィルタリングソフトの類も発売されているようですが、それらは「ぼぼ」という単語にどういう反応を示すのでしょうか。

以前、キッズgooという検索エンジンで遊んだ事があります。この検索エンジンでは「有害語リスト」や「有害URLリスト」とやらで有害なサイトを見せないようにする工夫がされています。つまり、この検索エンジン経由で閲覧できないサイトは有害である、子供の敵であると判断されているわけです。「はめ撮り」やら「すけすけ」やらと、どう考えても有害であるとしか考えられないネタを使用してきたため、このサイトははるか昔に有害であると判定されているのですが、では、それらの「有害語」に含まれないような言葉を駆使していればどうなったでしょうか。要は、「はめ撮り」ではなく「ぼぼ撮り」であればどうだったか、と。いや、そんな単語があるのか知りませんし、どう考えてもなさそうではあるのですが、「野ぼぼ」とか「車ぼぼ」とかいう単語までは聞いた事があるのでひょっとしたら、と。

狙って書くだけではなく、うっかり書いてしまう事、書かざるを得ない事もあるでしょう。「ほぼ同じ」と書こうとして「ぼぼ同じ」と書いてしまうことがあるかもしれません。なさそうですけど。
「お米券」を間違えて「おめこ券」と書いてしまうこともあるかもしれません。関西地方は大騒ぎです。
また、競馬ネタとしてウインターステークス勝ち馬のチェリーコウマンについて書く事があるかもしれません。チェリーコウマンについて書くとすれば、伝説の小見出しである「コウマン大穴」についても書かねばなりません。「雪の季節にコウマン全開」という元ネタがほとんど残っていないようなネタを使うかもしれません。こちらは関東地方が大騒ぎです。

これらの言葉はフィルタリングされるのでしょうか。ひょっとして「有害語データベース」とやらは各言語の基本的な語句に留まらず、方言やスラングの類もカバーしてたりするのでしょうか。「拙者の愚息もピンコ立ち」とかは結構グレーゾーンに踏み込んでいる気がしますが、「コウマン大穴」はかなり微妙なのではないでしょうか。そもそも「大穴」という言葉も深読みすればいやらしい雰囲気が漂ってますけど。


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