流暢な宇宙語と片言の日本語を操る私の長男。しばらく前までは宇宙語すらも片言であった事を考えると、格段の進歩です。って、二歳児なんてものは成長期真っ盛りなわけでして、身体も中身もどんどん成長しているものです。年寄りが小さい子を見るたびに「まあ、大きくなったねぇ」なんて言うのも頷けます。父親である私でさえ、朝は息子が起きた十分後に仕事に出かけ、夜帰ってくる頃には彼は既に夢の中、なんて生活を繰り返していると、週末のたびに新しい発見があったりします。駄目じゃん。父親。
さて、その長男二歳四ヶ月。今のお気に入りは大きなぬいぐるみと、玩具の自動車たちです。ぬいぐるみは常に一緒。「ライナスの安心毛布」というやつです。朝から寝るまで常にべったり。いい加減、汗やらなんやらで黒く汚れてきてるんですが。
ぬいぐるみは数ある中からお気に入りのみと遊んでいますが、自動車の方はそうではありません。救急車やパトカー、乗用車など、片手で足りないくらいある車の玩具で毎日遊んでいるようです。家の中では常に彼の車が走っています。私が側にいるときは、やれお前も一緒に遊べ、それ効果音を出せと、一生懸命遊んでいます。なまじ、私の実家で2tダンプを間近に見たために、効果音も普通の音では納得してくれません。ちゃんと、「左へ曲がります」なんて言わないと怒られてしまいます。
しかし、いつまでも全ての車の呼び名を「ぶっぶー」で済ませるわけにはいきません。ということで、しばらく前に絵本を買ってきて、車種別の呼び名を教えることにしました。これは「きゅーきゅーしゃ」だよ、こっちは「ぱとかー」だよ。そんな具合に。
そんな教育の真っ最中にいきなりやってきた次男の誕生。未熟児であったため、救急車で大学病院に搬送される事になりました。んで、私も同乗して行く事になりました。さて、ここで問題になるのが長男の存在。夜中に産婦人科に急行したもんで、当然長男も横にいます。相方は出産直後ですので、子供の世話をできるわけがありません。そんなわけで、長男も一緒に救急車に乗る事になったのですが。
本物の、しかも実際に動く救急車を見て興奮する長男。ええ、もうぴょんぴょん飛び跳ねています。夜中の、と言うかもうそろそろ明け方になろうかという午前四時ごろですが、それにもかかわらず非常に元気です。いや、あんた、父ちゃんはもうへろへろですがな、そう言えば晩飯も食ってませんがな、そんな事を思いながら、長男と一緒に救急車の中へ。車内では借りてきた猫のように大人しかったのですが、この一件は彼に大きな影響を与えたようです。
あれから一ヶ月。次男も無事退院でき、長男も新しく増えた家族に興味が湧いてきているようです。が、相変わらず車への興味の方が勝っているようです。散歩やドライブに出ているとき、彼はよく私たちに話し掛けてきます。
「ぱぱ、きゅーきゅーしゃ!」そうだね、救急車だね。
「ぱぱ、きゅーきゅーしゃ!」違うよ、あれはパトカーだよ。
「ぱぱ、きゅーきゅーしゃ!」違うよ、あれは消防車だよ。
ま、この辺までは分かります。どれも非常車両です。
「ぱぱ、きゅーきゅーしゃ!」いや、あれは工事の車だよ。
「ぱぱ、きゅーきゅーしゃ!」いや、これは掃除の車だよ。
お前にとっては、車の上でライトがくるくる回ってりゃ全部救急車かい。語学習得の道は長く険しいようです。いや、それはパトカーだって。