お仕事で付き合いがある人々というのはどうしても似たような業種になってしまいます。同じ仕事場で仕事をする人々は当然同じ仕事ですし、出張先なんかで一緒に仕事をする人々も似たような職種の方が多かったりします。しかし、古くからの友人だとか、友人の友人なんて付き合いだと全く違う職種の人がいたりします。私の場合、身分はまだ学生である友人が多かったりするうえに工業高専なんかに通ってたりしたのでそもそも異職種に就いている知人が少なかったりするのですが、それでも何人かは面白い話を聞かせてもらった人がいます。
「看護婦」という職業があります。ああ、今は「看護士」になったんでしたっけ。まあいいや。とりあえず以下は「看護婦」で通します。で、看護婦さんのお話。私の身内には妙に看護婦比率が多く、看護婦の従姉妹が二人ぐらいいたと思いますし、私の母も元看護婦だったりします。しかし、従姉妹だの母親だのには聞きたくても聞けないことがあります。そんなところに救世主が現れてくれました。私の友人の女友達が看護婦でした。ほとんど初対面のような時に「彼女に聞かねば誰に聞くのだ」と聞いてみました。
「盲腸の時なんか、毛を剃るでしょ。男の人のが『立っちゃった』らどうするの?」
いや、あんまり初対面の女性に対して聞くようなことでもないと思いますが、まあ笑って答えてくれそうな方だったんで。実際にちゃんと答えてくれましたし。心構えとしては「そういう事もある」と理解しているらしいです。はい。実際にそうなった事はないが、その時は見ない振りをするとおっしゃっていました。
中学生の頃、膝の怪我(右膝半月版損傷)で1週間ほど検査入院したことがあります。書類の都合上、「部活(サッカー部)中の怪我」ということになっていたので治療費は学校関係の保険から全額補助されていました。全額補助ならば、ということで検査の際は全身麻酔をかけてもらうことにしました。検査といっても、事前に「検査の結果次第では手術」と伝えられていました。幸い、この時は手術するほどではなかったようです。検査当日はベッドに寝たまま手術室に運ばれて行ったのですが、(うわー、重病人みたいだ)とアホなことを考えていました。手術室の中のことはほとんど覚えていません。心拍数を測る機械が準備されて(うわー、ますます重病人みたいだ)と思ったとか、「じゃあ、注射しますよ」と言われた途端に心拍数が跳ね上がったとか。あと、「酸素ですよ」と言われてマスクを着けたら変な味のする空気が流れてきて次に気が付いたら既に病室に戻っていたとか。麻酔効きまくり。
あいや、麻酔の話じゃないんです。問題はその次。全身麻酔となると、麻酔が覚めるまで意識はありません。私の場合、午前中に検査が始まって意識が戻ったのが夜だったので半日近く寝ていたことになります。目が覚めてしばらくすると下半身に違和感が。そうです、いわゆる「液体状の排泄物をきちんと外に出してくれる管」がくっついてました。ぶらんぶらんと。なんじゃこりゃと思いはしましたが、たしかにほったらかして垂れ流すわけにもいかないので仕方ありません。しかし、これが痛い。指で触ってみると根元の方まで入ってます。ちょっと寝返りを打とうとするだけで激痛が走ります。あまりの痛さに眠れずにいると見回りに来た看護婦さんに「早く寝ろ」と注意されました。痛くて眠れないことを伝えると「じゃあ抜こうか」と。……「抜こうか」ってなんかちょっとえっちぃですな。その時はえっちぃもくそもあったもんじゃありませんでしたが。で、どうやって抜くかというと。「力ずく」でした。「引っこ抜く」という表現が最も適切です。抜かれてからもしばらくは痛さに悶絶しておりました。まあ、しばらくすると眠りにつくことができたんですが。
この時の記憶が残っていたんで、彼女に聞いてみました。
「自分の手で持ってから管を突っ込むの?」
もうちょっと言葉を選べよ、俺……。で、その際の回答は「仕事だから気にしない」。ご立派なプロ意識です。はい。ただ、いくら仕事でももうちょっと丁寧に扱って欲しいというのが経験者である私の気持ちです。痛いよ、あれ。