我々の小学校、中学校は給食でした。給食と言うと「嫌いなものが食べられなくて昼休みも食事中」とか「牛乳を飲んでる時に笑わされて口から牛乳を噴き出す」等、様々な出来事が数多くの雑文書きの手によって世に送り出されてきました。
同じネタを扱っても仕方がありません。先程の例とは違う話をしましょう。
育ち盛りの人間にとって、給食一人前では足りません。当然「おかわり」という行為を行います。
この「おかわり」。基本的には早い者勝ちです。気合を入れて一人前を平らげれば追加注文し放題です。とはいえ、調子に乗って豚汁三杯も食べた直後、昼休みにサッカーなんてやってるとえらい目に遭います。遭いました。
また、パンなどの固形物の場合だと食べ始める前に余り物をじゃんけんなどで分配する場合もあります。長い前振りでしたが今回はじゃんけんについて。特に、じゃんけんの亜種についてです。
じゃんけんの起源は古代中国であるという説が有力です。手元の資料ではこのように解説されています。
「古代中国の秦王朝で、各地から武術の達人を集め編成された近衛兵の間で流行していた遊びが起源とされている。
当時は現在でのグー、チョキ、パーで相手を殴り倒すことが勝利の条件とされていたが、死傷者が増えるに従い軍当局がこれを規制、現在と似たような形である寸止めルールが採用される。
なお、最もポピュラーな掛け声である『じゃんけん、ぽん』の語源が当時のじゃんけんで名を馳せた流派である『西拳法』にあやかったものであることは言うまでもない。」
(民明書房刊 『中国歴史裏辞典』より一部抜粋)
歴史の古いじゃんけんですが、日本の各地ではこの亜種が多数発生していることが確認されています。
一例として、「3すくみ方式」から「多数決方式」への変化があります。
私の小学校は、サッカーなどチーム単位に別れる必要があった場合にグーとパーのみを用いて同じものを出した人間同士でチームを組むことが一般的でした。この方式は、「グー」と「パー」のみを用いることから「グーとパー」、「グッパー」と呼ばれていました。
また、グー、チョキ、パーのいずれも使用せず、掌と手の甲でチーム分けをする場合もありました。この方式は「ほがほが」と呼ばれていました。いや、本当に。掛け声がそんな感じだったんです。おそらく、当時の友人達に聞いても誰も語源を知らないと思います。
私が通っていた小学校では「グッパー」が主流でした。しかし、隣の小学校ではグーとチョキのみの「石とはさみ」が主流でした。中学校ではこの2つの小学校から生徒が集まっていました。ある日の給食の時間、この文化の違いがある悲劇を生んだのです。
「お、パンが余ってるぞ」
「あ、俺も食いたい」
「俺も」「俺も」
「多すぎだ。別れてから少ない方が勝ちな」
『別れてから』ということは先述の亜種じゃんけんを使用することを意味しています。
「せーの、『石とはっさみ!』」
……無意識でした。『別れてから』の段階で『グッパー』の準備をしており、しかも運悪く「パー」を出していました。
「なんでパーなんだよ」
「グーかチョキだぞ」
「はい、お前負け。反則負けー」
不戦敗。以来、私は「石とはさみ」ルールはトラウマになっております。ああ、パン食べたかったなぁ。