あれは確か、学生時代のことでした。友人宅に遊びに行き、毒にも薬にもならないことを喋っていると別の友人がやってきました。曰く、「今から飲みに行こう。お姉ちゃんがいる店に行こう」と。
それからはあれよあれよと話が進み、4人の野郎達が夜の町へと繰り出していきました。
いや、最初は断ったんですよ。財布の中には1000円程しか入ってないし、何よりその時はサンダル履いてましたから。サンダル履いてそんな店に行っちゃいかんでしょう。
でも結局ついて行っちゃいました。ボーナス直後だからおごってやると言われたんで。
で、お店に入って。いろいろと話が盛り上がっていて、ふと話題がカラオケのことになりました。私が「カラオケに行っても歌わない」と言うと、お姉さん達はびっくりしてました。「何のためにカラオケに行くのか分からない」と。
長い前振りだったな。カラオケの話です。
私はカラオケが苦手です。理由は「下手だから」の一点に集約されます。カラオケに行っても滅多な事がない限り歌いません。それでもお節介な人はいるもので、なんとしても私に歌わせようとします。
何度断ってもマイクを渡してくるので、ある時仕方なく歌ってみました。歌い終わると、「歌おうとしない理由がわかった」と言い、それ以降私にマイクを渡すことはありませんでした。
……ああ、そうだよ。下手くそだよ。しくしく。
なぜ、歌が下手なのか。先日その答えが少しわかりました。
「音域狭すぎ」
先日、「ドから順番に音を出していってどこまで音が出るか競走」を行ってみたんですが、完敗でした。ドからソぐらいまではなんとかなったんです。シあたりで既に裏声でした。高いドなんて出てきません。
「相手が女性だから、高い方で勝負するのが間違ってたんだ。低い方なら勝てるはず」と、「第2回 どこまで音が出るか競走 今度は低い方で勝負」も行ってみました。
結果。惨敗。相手はあきれてました。
別に、勝負した相手がマライア・キャリーだったとかそういうわけではありません。普通の女性です。昼間から素面でこういう馬鹿なことをして普通も何もないとも思いますが。
ちょっと調べてみたんですが、普通の人は2〜3オクターブくらいは出せるそうです。普通は。私には2オクターブなんて無理です。
こんな声の持ち主なんでカラオケでは食べたり飲んだり喋ったりと、「歌う」以外のことをしています。
いや、別に寂しくなんかないですよ。楽しいですよ。ほら、誰かが聞き役にならないと歌ってる人に悪いじゃないですか。いや、だから、私は歌わないからマイクはいりませんって。
カラオケにおけるマイク攻防戦。私にとっては「いかにマイクを奪うか」ではなく「いかにマイクから逃げるか」です。だから、私は歌わんっちゅうに。マイクを渡されても困るって。