「USB」という規格が世に広まりだしてからかれこれ十年以上になります。もともとはケーブルをつないで様々な周辺機器を接続する用途で使用されていましたが、最近では「USB = USBメモリ」という認識の人も多いのではないでしょうか。うちの奥さんみたいな。「USB 持ってない?」と聞かれて「ハブ?ケーブル?まさか拡張ボード?」と聞き返した私は間違っていないはずです。なのに「USB はUSB に決まってるでしょ」と、(またこの馬鹿旦那はオタ臭い知識で煙に巻こうとしているな)と言わんばかりの反応を返されてしまいました。間違えないように確認しただけなのに。

数年前までは、USBの仕様用途というと、PCとの接続が主でした。ハードディスクだったりプリンタだったり。デジカメなんかもそうですね。USB接続の小型扇風機なんてものもあります。USBメモリという非常に扱いやすいデバイスはここ数年で普及したものです。当初は64メガで5000円とかいうお値段でした。ええ、私も勿論持ってますとも。今じゃ容量的にも使いにくいったらありゃしない。数ギガで特価980円とか見ると、分かっちゃいるけど日進月歩の世界だよなあと思うのです。長い事PCを使ってるとこういう話はいくつか持っているものですけどね。「PC用のメモリが8メガで4万円という超大特価だったから購入した」なんて時代もありましたし、「SCSIボード付きハードディスクを1ギガ4万円で購入した」なんて時代もありました。どちらも15年から20年ほど昔の話です。

年寄りの昔話は愚痴になるのと長いのが欠点です。昔話は置いといて、一般に「USB」というものが認知されだしたのはUSBメモリと携帯音楽プレイヤー、あとはスマートフォンでしょうか。USBメモリはお手軽なデータ連携で一般層に普及しました。何より、その名前の中に「USB」って入っちゃってるもんですから、略称として「USB」と呼ばれたりします。うちの奥さんみたいに。あと、音楽プレイヤー、スマートフォンはデータ連携に加えて充電という用途がありました。

かつて電源コンセントに直接差してUSBに変換できるアダプタを見て「これは便利だ」と思ったものですが、今では電源タップそのものにUSBポートが付いてたりします。しかも2つも。当然何らかのデータのやり取りはできないのですが、それでも製品として成立するくらいにUSBを利用した充電という用途に需要があるのでしょう。特にスマートフォンはバッテリー消費が激しいですし。

USBというものは規格にいくつかの種類があります。と言っても、USB2やらUSB3やらは見た目でさほど区別がつきませんし、「挿せば動く」という意味ではどれも同じです。ケーブルの種類で区別してみると、まず通常のUSBがあります。んで、横幅が半分くらいになったミニUSB。そして近年急増しているのがミニUSBよりもさらに小さいマイクロUSBです。スマートフォンに使用されているのはこのマイクロです。「通常版が最初に出て、最小が急激に増加、真中が中途半端な存在になった」というとSDカードもそうですね。大容量のSDカード、スマートフォンなどに使用されて使用率急増中のマイクロSDカード、小さすぎず、容量多すぎずで進化から取り残されてしまったミニSDカード。ミニUSBもミニSDカードもだんだん消えていくのでしょう。

「USB」という規格の便利な点は、基本的に「挿せたら同じように動く」という点です。勿論、デバイスドライバの設定など基本的な設定は必要になりますが、「こっちは挿せば動くけどあっちは挿しても動かない」という事はありません。だからUSBメモリを使用してあっちのPCのデータをこっちに持ってくるという事が簡単にできます。キーボードだってマウスだって扇風機だって、挿したら動きます。動くはずです。だから、USBケーブルを買ってくればそれに接続する機器が変わろうと同じように動くはずなんです。

現在私たち夫婦は二人ともスマートフォンを使用しています。これがまたバッテリー消費が激しいもんで、充電器の取り合いです。もともと居間には充電できる環境を整えていたのですが、充電ケーブル一本が二本になり、居間のみ一か所が寝室が増え二ヶ所になりと、あちらこちらに増殖しています。また、居間のテーブルタップもスマートフォンの充電器にDS の充電器、さらに3DS の充電器やWii 等で使用しているエネループの充電器と、コンセントに余裕がまったくありません。アイロンや掃除機を使う時はどれか抜かないといけません。PSP やGBASP は居間で充電する権利すらありません。

そんな現状を多少なりとも解消するため、さらにテーブルタップ周りに混乱を起こしてみました。現在5口のコンセントがあるテーブルタップ。その末端にコンセント2口とUSB2口のタコ足コンセントを増設してみました。さらにUSBの口に挿すために2mのマイクロUSBケーブルを一本。あっちこっちに充電ケーブルが伸びた、まさしくタコのような代物が出来上がりました。しかし、これでどこに挿しても充電ができる、ケーブルの取り合いがない環境ができあがりました。と、言いたかったのですが。

買ってきたものを接続して試しに充電してみますが、私のスマートフォンが充電できません。おかしい、不良品だろうかと思い奥さんのスマートフォンに替えてみるとこちらは充電できます。じゃあここをこうしてあれを替えて、とやってみたら私の充電が開始した代わりに奥さんの方が充電ではなくデータ転送モードに切り替わりました。ケーブルを替え、コンセントの差し込み口を変え、スマートフォンを変え、挿しこむときの角度を変え、挿しこむ際に唱える呪文を変え。とっかえひっかえやった結果、ようやく全機器の充電が行える環境が出来上がりました。私は従来から使用していた50cm程度のケーブルじゃないと充電できませんが、それでも充電できないよりましです。

こんな具合に、「繋げば同じように動く」はずのUSBの規格に振り回されています。データ転送のドライバのどうのではありません。「充電」という、おそらくとても単純な、初歩的な機能です。しかも、動かないのは決まって私の方なのです。動かないから不良品だ、と思ってもどうにかこうにかこねくり回したら奥さんの側で正常に動作します。奥さん専用ケーブルが増えたんで私の分を買い足そうとしたら、やっぱり私の方で動かずに奥さん専用となります。そんな訳で、これで奥さん専用ケーブルは三本目です。私専用は存在せず、共用ケーブルが二本だったでしょうか。一体、マイクロUSBケーブルにはどんな謎が隠されているのでしょうか。そして、私は一体いつになったら満足いく充電環境を手に入れる事が出来るのでしょうか。


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