世の中には様々な「見えない壁」があります。代表的なのはオリンピックにおける「金以外はドベと一緒」でしょうか。「参加する事に意義がある」とは言うものの、それでも金メダルと銀メダル、一着と二着では大きな差があります。金メダルは初恋の人ですが銀メダルは「残念ながら」とか言われます。競馬では大レースで一着になったら種牡馬になって種付けウハウハですがハナ差二着だと「惜しかったね」で終わってしまいます。やはり見えない、しかし大きな壁があるのです。

そんな大きな事じゃなくても、常日頃からなんとなく意識している壁というものもあります。対戦型のゲームを趣味にしている人の中には「通算勝率五割」というものが一つの壁になっている人もいることでしょう。「勝率五割」という事は、大雑把に言えば「勝ちと負けが同数」となります。という事は、実力的にプレイヤー集団の真ん中辺りと言えるわけです。上を見れば勝ち組集団ですし、下を見れば負け組集団です。負け組から見れば「そこまでは上がりたい」でしょうし、勝ち組から見ればそこには近づきたくないはずです。普通に考えればその辺が最も人数が多いはずですから、大多数の人間にとっては「五割を超えるか割り込むか」というのは大きな壁であると言えます。

五割を超えると、もしくは五割を諦めた場合はまた別の壁が待っています。上に行けば「次は勝率55%」となるでしょうし、下に行けば「せめて45%阻止」を目指す事でしょう。もっと細かく、例えば「目指せ52%」だったり、「49%の壁を超えたり戻ったり」なんて人もいるでしょう。この辺の壁の場所は人それぞれでしょう。最初は10% 刻みだったのが5% になり2% になり、最終的に小数点以下の戦いになることも珍しくありません。または、率の戦いを避けて数で勝負するようになったり。「通算100勝達成(勝率三割)」とか「5連勝達成(でもその直前に8連敗)」とかですね。壁をどこに設定するかは人それぞれ。自分の得意な、というか勝負になり得る条件を設定すればいいんです。なに、いざとなったら「負けたけどいい勝負だった」とか言い張ればいいんです。

「五割」と似たような壁で「平均」というものもあります。「五割」の方は「おおざっぱに真ん中」ですが、「平均」だと本当に真ん中です。ただこちらはある程度統計を取らないと分からない値です。そのため、ゲームなんかでは用いられる事は多くありません。もっと真面目な分野での「壁」となります。「平均年収」であったり、「平均寿命」であったり。「偏差値50」も「平均」と似たようなものです。

基本的に「平均やや下」あたりで壁を作っては戦っている私ですが、数少ない「平均より上」で戦っている分野が「身長」です。「俺の身長があと10cm 高かったら、引く手数多でよりどりみどりでウッハウハだった」と言い張るくらいに拘っています。日本人の平均身長はだいたい170cm。それに対して私は公称175cm です。170cm のもう一段階上、175cm を壁としていました。

問題なのが「公称」という部分。その昔、私が学生時代に「174.4cm」という微妙な値を叩き出した事が原因です。四捨五入しても届かない、しかし切り捨てるには惜しすぎる。結果として無理やり繰り上げて「175cm」を名乗っていたのでした。何ら根拠が無いわけではありません。しかし大声で言い張るのも気が引けます。なので、あくまで「公称」。

そんなこんなで約十年。ついに「公称」が取れる日が、壁を乗り越える日がやってきました。今年の健康診断において、身長「175.1cm」という測定結果が。公的記録です。自宅でメジャーを使って適当に測定したものではありません。ちゃんとした測定器です。それで175。ついに大台175。夢にまで見た175。約0.5cm 伸ばすために十年近くかかりましたが、それでも達成は達成です。

壁を越えた、となるとやはり目指すは次の壁、「身長180cm」です。なに、未だに身長が伸びているという事は、これからも伸びていくはずだ。180cm まであと5cm。という事は、単純計算で100年後には到達するはずです。目指せ、180cm。目指せ、130歳。ついでに平均寿命とも勝負だ。


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