中学生くらいの頃、「自分用のテレビがほしい」と思っていました。自室にテレビが置ければゲームやり放題だからです。なにしろ当時のゲーム業界はRPG 全盛期。ある程度時間をかけなければクリアできないゲームばかりですので、居間にしかテレビがなく、当然長時間テレビを占拠できないような環境に不満がありました。それに、自室にテレビが置ければエロ番組も見放題です。当時はまだ深夜放送も現在ほど規制が厳しくありませんでした。おそらく今では「ギルガメッシュナイト」なんて放送できません。あと、最近では週末深夜のエロ映画もあまり放送してない気がします。統計を取ったわけではないので、あくまで感覚的なもので。まあ、ちょっとネットに繋げばいくらでも無修正のあれこれを見る事ができる現在では、相対的に深夜のエロ放送の重要性は低下しているとも言えます。
その頃検討していたのが車載用のテレビ。だいたい五万円くらいだったでしょうか。当然そんな金なんぞあるわけがないので、広告を見ては思いを募らせるだけでした。そのテレビが家庭用の電源で動作するのか、そしてゲーム機を接続できるのかもわからなかったのですが。結局、そういうテレビは購入せず、たまたま親戚から譲り受ける事ができた14インチのテレビが我が部屋のテレビ第一号となりました。その親戚がテレビを買い換えたから譲ってもらえたのですが、まあこれが結構な年代物。なにしろチャンネル切替がダイヤル式です。上がVHF、下がUHFのあれ。でも映ればいいんです。おかげでゲーム三昧、深夜番組三昧の日々を送れましたから。ただ、残念ながらこのテレビ、私が使い始めて一年ほどでまともに映らなくなりました。寿命です。
二代目となったのが学生時代に買ってもらったビデオ内蔵のテレビ。血気盛んな高校生にビデオなんて与えたらそりゃもう、ね。八面六臂の大活躍でした。また、最盛期にはファミコン、スーパーファミコン、プレイステーション、さらにセガサターンと、実に四台ものゲーム機が接続されていました。同時に使えるのは一台だけですので全部接続するのは無駄と言えば無駄ではあるのですが。いいじゃん。俺が満足すれば。なおこのテレビ、今でも実家に置いてあり、実際に使用することも可能です。15年経ってもまだまだ現役。フルに使われていたのはそのうちの前半五年ほどではありますが。
結婚してからは、「自分のテレビ」が「自宅のテレビ」となったわけですが、それでもある時から再び「自分専用の小さいテレビがほしい」と思うようになりました。きっかけは2002年の夏。サッカーのワールドカップです。あの時は、試合時間に合わせて定時退社をし、バスから駆け降り、そして電車に飛び乗るサラリーマンを多く見かけました。私もその中の一人です。この時もし自分用の、携帯できるようなサイズのテレビがあれば、あの走るサラリーマン集団を尻目にゆっくり歩いて観戦する事ができたはずなのです。この要望は数年後、携帯電話を買い換えることで実現しました。携帯を買い換える際に「電車の中でテレビが見られるような機種」という条件で探したためです。当時はまだ「ワンセグ」というものはなく、受信できるのは地上アナログ放送のみでした。まあ、見る事さえ出来れば細かい事はどうでもいいんです。このテレビ、というか携帯はその後キャリアを変えるまでいろいろと活躍してくれました。
キャリアを変えて自分用のテレビを手放してから約二年。昨年買い換えた携帯にはワンセグ受信機能が付いていました。「必要でもないけど、なんかこう、あった方がよさげな気がする」という消極的な理由でそういう機種を選んだんですが。やっぱほら、猫も杓子もワンセグだからナウいヤングの携帯にはワンセグがチョーお勧めじゃん、って感じで。引っ越してから通勤時間が短くなり、移動中に携帯を見るよりはとっとと帰宅して自宅のテレビを見たほうがいいんですが、まあ、それはそれで。それに、有れば有ったで便利な場面もあるんです。
本日2009年3月24日はワールドベースボールクラシック、所謂WBC の決勝戦です。更新するのは夜ですので勿論結果が出ているのですが、これを書いているのはまだ昼間。まだまだ結果は分かりません。で、昼休みはずっと試合を観戦していました。いつもならお昼寝タイムなのに。観戦していたのは私だけではありません。フロアのそこかしこには、無言で携帯を見詰める人々が。所によっては数人の集団で見ていることもあります。で、その人たちが、バラバラの場所であっても同じタイミングで歓声を上げたりため息をついたりするのです。私も声こそ出さないものの喜んだりがっかりしたり。
観戦するのはフロア内だけとは限りません。私は昼食後に歯磨きをするのですが、勿論試合経過が気になるので携帯の画面を見ながら移動します。お手洗いに到着するといつも顔馴染みの先客が。顔は知っているものの面識はありません。そんな方々が「今日本がリードしてる」とか言ってます。ですが、つい一分ほど前に同点になっているのです。割り込むような形で洗面台に携帯を置き、「さっき同点になりました」とか言いながら会話に参加する私。そしてみんなで小さい画面を注目。どうせ全員歯磨き中なんで会話はありません。かくして、こちらでは静かに観戦する事ができました。
で、昼休み終了後も手元を見るふりをして足の上に置いてちょっと観戦したり、トイレにこもるふりをして観戦したり。いやあ、やっぱ自分専用のテレビっていいですなあ。無いなら無いで構わないんですが、やはり有ったら有ったで便利です。とは言え、次に使う機会が思い浮かばないのも事実。仕事中にテレビを見たい、見なければならないと思うような出来事ってそうそうないですし、基本的にはネットにつなげれば事足ります。それでも、昨日、そして今日と役に立ったので、それだけでも十分に役目は果したと思うのです。