メイドカフェがどうのというのは既に一般にも受け入れられているのでしょうか。気がつけば全国版のニュースなんかでも普通に報道されているような気がします。それとも、私の情報源が偏りすぎているのでしょうか。

「九州初上陸」なんてニュースも今は昔、「熊本にも開店」という話すら聞こえてきますが、その流れに乗って「福岡では風営法の絡みで問題があった」という話をすると、この話は初耳だという人が多いようです。で、この話を振った際の反応というと、十中八九が「メイド」と「ふーえいほー」という文字を直接足し合わせてさらに二を掛けた様な、それはそれで素晴らしい想像が展開されてしまうようです。無理もありません。私だってそうでしたから。「ご主人様」とか「ご奉仕」とか、そういう単語が脳内を飛び交って、盛大に爆発してしまうのは仕方ありません。が、実際どういう事なのかというと、「同じ椅子に座って『はい、あーん』なんて食べさせてくれるのは、それは『シャッチョーサン、ワタシ、オカネモッテルヒトスキヨ』な人たちが酒をついでくれるのとどう違うんだ」という事だそうで。別に物凄いサービスが引っかかったなんてわけではなく、両方並べるとどっちも同じじゃないか、という事だそうです。で、ここまで話すとやっぱり皆は物凄くがっかりしてくれます。無理もありません。私だってそうでしたから。それにしても、野郎どもは無駄に夢を持ちすぎです。それがいかんとは言いませんが。

メイドカフェが大当たりしたこの業界。最近では新しく「執事カフェ」というものまで出現したそうです。と書くと、ついつい「めぇー」「そりゃ羊カフェだ」なんてやり取りをしたくなりますが、おそらく世の中の数多あるサイトの各地で同様のやり取りがあったと思うので、ここでは自粛させていただきます。もう満足したし。
で、羊、もとい、執事カフェ。メイドカフェというものは、来店時に「お帰りなさいませ」で出迎えてくれ、「ご主人様、あーん」と食物を食べさせてくれ、「行ってらっしゃいませ」と見送ってくれる、そういう店だと解釈しています。行った事ないけど。で、執事カフェがどういうものかというの、来店時に「お帰りなさいませ、お嬢様」と出迎えてくれ、食物は「あーん」とやってくれないけどなんかこうピシッと準備してくれそうで、んでもって「乗馬の時間です、お嬢様」と見送ってくれる、そういう店なんだそうです。並べてみると接客担当者の性別が変わって、あと細かい点がちょこちょとと変わったくらいにしか見えませんが、現物では大違いでしょう。私の場合に限定するとしても、執事カフェには興味が湧きません。どうせ接客されるなら可愛いお姉ちゃんの方が嬉しいですし。同様に、メイドカフェには特に興味はないが執事カフェには行ってみたい行きたい是非行くぞ、という人もいます。具体的には私の妻とか。

つい先日、ニュースで「メイドカフェがブームだけどなんと執事カフェまで出現」なんて話題をやってまして、一緒に見ていた奥さんの「何か」をクリーンヒットしたようで。それからというもの、その執事カフェに過剰な期待を抱いてしまったようです。うちの奥さんは男性の低い声が大好きだそうで、具体的にはお笑い芸人の麒麟、その中の声の低いほう、あの声にメロメロなのです。私が頑張って低い声を出しても、「あなたが出せる一番低い声よりも、もっと低い声が好き」と言われます。で、そんな低い声で「お嬢様」と呼ばれたいようです。しかし、九州随一の都市である福岡市にも執事カフェは無いようです。だから、いつもならば「いやあ、残念だけど行けないね。九州にも進出してくるといいね」なんて当たり障りの無い会話でお仕舞いになるはずでした。

幸いにと言うか困ったことにと言うか、今年は冠婚葬祭の当たり年で何回か関東方面に向かう用事があります。もう奥さんは行く気満々です。七月は親族の結婚式だから家族全員で移動するのでそれだけの時間の捻出は難しいようですが、九月になると奥さんの友人の結婚式が。こちらは単独行動です。ええ、やる気満々です。「予約しなきゃいけないみたいだよ」と言うと予約方法を調べようとするくらい。手がつけられません。予約して、店に行って、低い声の素敵な執事に「お嬢様」と呼ばれて、んでもって冷たくあしらいたいのだそうです。性質の悪い客だと思います。しかし、思い描いているような執事が出てくるだろうか、という問題があります。うっかり茶髪で甲高い声のお兄ちゃんなんかが「執事」として出てきたら「店の者を呼べ」とか言い出すんじゃないかと心配しています。夢が実現するとしても数ヶ月先の話ですが、はたしてお嬢様扱いされる夢は叶うのでしょうか。


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