私の人生の中で初めて「彼女」と呼べる存在になったのは相方でした。それから半年もせずに「奥さん」という存在に変化した事の是非に関しては語りません。人生いろいろと言う事で。それにしても、当初このサイトで妻である旨を隠して「相方」と表現したばっかりに今でもその呼称を使っているわけですが、なんと言いますか、非常に面倒です。だって、実際には「相方」と呼びかける事なんて絶対無いわけですし。ネタのためだったとは言え、ちょっと後悔しています。いずれなんの前触れもなく呼び名を変えます。はい。
んで、彼女云々の話なんですが。まあ、そういう関係であれば所謂「でえと」というやつにも出かけるわけです。「でえと」です。齢二十にして初めて経験するイベントです。女友達と飯を喰らうとか、女友達の家に行くとか、そういう経験はありましたがそれとは一味も二味も違うのです。
自分でも分かるほどはっきりと狼狽しておりました。彼女っすよ彼女。マジですか、騙されてませんか、どっきりじゃないですか、カメラどこですか。そんな感じです。本当に周囲にカメラや怪しい人影がないかも見てましたが、それ以前に目の前の相方を直視できません。ええ、ええ、それくらい純粋な人間だったんですよ。今はどうかはさておき。
その時の狼狽っぷり。今でもたまに相方から揶揄されます。
「緊張してたくせに」とか。
そりゃ、あなたは「彼氏と一緒に食事」というのは初めてじゃなかったでしょ。初心者なんだから、初めてなんだから仕方ないだろう。そう言っても聞きません。おそらく死ぬまで言われます。共に白髪が生えてきても言われるでしょう。そんな事言ったらきっと
「大丈夫。そっちは白髪が生える前に全部抜けちゃうから」
とか言われるのですが。
言われっぱなしです。理不尽です。
さて、先日家族でとある公園に行きました。長男の幼稚園で行われた遠足にて訪れた場所です。長男は所謂「回転ジャングルジム」のような遊具が大好きでして、その公園ではずっとその遊具で遊んでいたそうです。近年ではあの手の遊具は危険だという事でどんどん撤去されています。自宅の近辺でもあまり見かけません。祖母の家の近所にあった公園には設置されていたのですが、こちらは回転しないようにがっちりと溶接されていました。長男はそれがご不満だったようで、「まわしてー」と私に頼んでいました。いや、頼まれても回しようがなかったんですけどね。
その遊具をたっぷりと堪能させ、帰宅しようと車に戻りました。相方は長男を駐車場の片隅にあるトイレに連れて行きました。私はその間、次男をチャイルドシートに乗せ、ベビーカーと三輪車を車のトランクに積み込んでおりました。そこまでやって、まだ二人が戻ってくる気配がなかったので車でトイレの方に移動する事にしました。トイレまでは徐行しながら一分程度です。ゆっくりとトイレに近付いていきます。
「何かがおかしい」と思いました。はっきりと見えないのですが、相方が持って行った長男の水筒。その水筒を持った手がいざこざに巻き込まれているように見えます。不安になってトイレの横に駐車したら、二人が駆け込んできました。
話を聞いてみると、変質者に襲われそうになったそうです。胸元を除いたりした挙句、「モウ僕我慢デキナーイ(意訳)」と言いながら襲い掛かってきた、と。見た目で「いける」と判断されたのかもしれません。しかし、今では腹筋運動が二回もできないとはいえ元空手少女です。きっちり振り払い、逃げてきたそうです。そう言えば、たしかにあの時逃げ去っていく不審なおっさんがいました。
無事で何よりです。何よりなのですが、問題はここからです。
「もうちょっと早く来てくれれば何も起きなかったのに」
待て。何故矛先が俺に向いてますか。こっちだって準備をしてたんだから仕方ないじゃないか。そう言っても聞きません。きっとこの件もずっと根に持たれるのでしょう。
「変質者に襲われそうになったのに助けてくれなかった」
言われっぱなしです。理不尽です。