始めてパソコンを手に入れた頃は、丁寧に丁寧に使っていたものです。3日使えばデフラグ、1週間使えばスキャンディスクといった具合に、メンテナンスに時間を惜しまなかったものです。ちょっと具合が悪くなり再インストール作業なんてやった日には、「おお、俺も成長したもんだ」と思ったり。無論、そんなに甲斐甲斐しく世話をするのにもすぐ飽きてしまうのですが。

昔はハードディスクの容量も500MBとか1GBとかでした。私が最初に手に入れたWindows系のマシンでは、内蔵ハードディスクの容量は420MB、その1年後に4万円で購入したSCSIのハードディスクは1GBでした。これくらいの容量ですと、デフラグなんかにもそれほど時間はかかりません。だいたい30分程度放置しておけば作業が終了しています。必要なデータのバックアップも、フロッピーを10数枚使用してちまちまと行っていました。「ああ、フロッピーのフォーマットって面倒くさいなぁ」とか思いながら。たまにフォーマット作業中に昼寝してしまう事もありました。

21世紀である現在。私のPCには数十GBのハードディスクが搭載されています。学生時代にアルバイトで貯めた貴重な資金を投入したハードディスクよりも、遥かに性能が高いものが、よりお求め安いお値段で手に入ったりします。80GBが15000円ってどういう事じゃ。で、そんな大容量のハードディスクを使用していると、メンテナンスも億劫になります。デフラグをかけると3日たっても終わらない、スキャンディスクは……あ、異常終了時にやってるか。バックアップをしようにもCD-Rが何枚も必要になる、という具合に、昔であればやっていたような最低限のメンテナンスも行わないようになります。

さて、Windows系のOSを使用していると、避けては通れない現象というものがあります。そう、「なんか調子が悪くなった」というあれです。一番手っ取り早い回復法は「OSから再インストール」という乱暴な手段です。が、これをやるにはデータのバックアップを取ってからでないといけません。バックアップをとるにはCD-Rが何枚も必要になる、面倒だなぁ、いいや、まだ使えるし。そんな考えで行動していると、再起不能に陥ったときにひぃひぃ言う事になります。

先日、ネットラジオを聴いていたときの事です。掲示板に書き込みつつ、喋りに耳を傾けていたときにある「WinAmpが異常終了した」旨のエラーメッセージが出てきました。あらあら、何が起きたのだろうかとそのダイアログを閉じると、次の瞬間には「NetScapeが異常終了した」旨のエラーメッセージが。これは変だ、何が起きたんだとそのダイアログを閉じたら、今度は「Explorerが異常終了した。Windowsを再インストールしろ」なんてエラーメッセージが。「再インストールしろ」なんてメッセージは始めて見ました。うわー、凄いや、珍しいなぁ、等と現実逃避しながらも、こちらの操作を一切受け付けないので電源切断、再起動の荒業を。で、再起動して原因を調べてみようと思ったら……二度と立ち上がらなくなりました。

物理的に逝ってしまわれたようで、BIOSの画面からもそのハードディスクがまともに認識できません。最近いろいろと話題の某F社製ハードディスクだと気づいたのはその翌日でした。ああ、そう言えば去年安かったからパルクで買ったんでしたな。って、そんな事全然気付いとらんがな。気付いてればバックアップくらい取ってますって。ということで、我がデスクトップマシンのWindows環境は涅槃へと旅立ってしまいました。ああ、1年くらい安定して動いてたのに。

悔やんでも消えたデータは返ってきません。幸い、逝ってしまったハードディスクは、現在使用している3種類の中でも最も容量が小さいものです。先日買ってきた80GBのハードディスクが飛んだのだとしたらちょっと簡単には立ち直れそうにありません。20GBのハードディスクを外し、配線をやりなおして30GBのハードディスクをメインに持ってきます。OSを入れなおし、ドライバを探し出し、必要なソフトを入れ……作業は順調に進む「はず」でした。何度も繰り返してきた事ですから。NetScapeの4.5が入っていたCDが見当たらず、「変だなぁ、もう21世紀のはずなんだがなぁ」と思いながらNetScapeの4.04なんてものをインストールしたあたりからおかしくなったのだと思います。つーか、4.04なんて初めて使ったぞ。よく残ってたな。

何度も繰り返してきた作業。目をつぶって……は無理だけど、間違えることもないであろう作業。簡単だと甘く見ていた私を襲った罠とは。ええ、無駄に苦労しましたとも。


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