物語などで、登場人物の個性を出すために「その人物が話す際、語尾や文中に特殊な言葉をくっつける」という手法があります。たぶん。いや、勢いだけで書いてるんで、本当にそんな手法があるのかなんていう難しい質問はしないでください。「ああ、あるねぇ」と適当に聞き流しておいてください。
一般的な方法には「中国人の会話には『アル』という言葉を使う」というやつがあります。「ワタシ、嘘つかないアルよ」とかそういうアレです。これは既に「お約束」の域に達しているので、書き手としては特に説明をしなくとも「アルアル言ってるのは中国人ということでどうかよろしく」という事を読み手に伝えることができます。いや、実際には中国の方々がそんな話し方をすることはないと思います。わかってますけど、お約束ということで。はい。
さて、ここに1人の男がいます。我が友人米某。遥か関東の地に住む男。彼が高校を卒業する直前の話です。既に全ての授業が終わり、自主登校だかなんだかで登校するのは任意となっていた時期、あまりにも暇だったのでふらっと学校に行ったそうです。すると、そこで同級生の女の子からちょっとした相談事を持ちかけられたとの事。この時点で聞いていた人間たちからは「米某のくせに生意気だ」との無茶苦茶な非難を受けていました。いいじゃないか。彼もたまにはそんなおいしい目にあっても。などとは露ほども考えずに私も非難してました。「罰として運動場10周してこい」と言ったのはまた別の機会だったと思いますが。
で、そんな青春の1ページを飾るような場面に遭遇した友人米某。どうも話を聞くと色恋沙汰に関する事のようです。しかも米某曰く、「結構仲がよかった女の子」からの相談事だと。この辺で再度「生意気だ」との非難の声が高まってきました。「米某のくせに女の子と仲がいいなんて生意気だ」と。主に私が言っておりましたが。しかし非常にけしからん。私が学年末試験に向けて今までのツケを払わされ、普通高校に進学していた友人達は大学入試に向けて血を吐くような思いをしていた頃です。既に就職が決まっておりあとは卒業するだけ、というだけでも許しがたいのにさらに女の子と甘酸っぱい思い出まで作っています。で、どうなったというのだ。貴様はいったいどのような会話をしたのだ。えーい、吐け、吐くのだ。
「いや、面倒だったんで『それは困ったポン』『大変だポン』『頑張るポン』ってポンポン言ってたら怒ってどっか行っちゃった」
……馬鹿野郎様ですか、あなたは。その後、彼との会話には『ポン』という語尾が飛び交うことになりました。「それ取ってくれポン」、「コーラ買ってきてくれポン」、「腹減ったポン」等々。結果として、私の頭の中には「ポンという語尾」と友人米某が強く結びつくこととなりました。普通だったら困るようなことは全くないのですが……数年後、とある車会社のCMで語尾に「ポン」と付けるキャラクターが出てきたときは困りました。テレビの中からポンポン言われる度に彼の顔が。勘弁してくれ。